寡黙で孤独な青年は、自身に尊大な価値を見出だしていた
職にも就かず、ふらふらと街をさまよう彼が手にしているのは他人の財布、腕時計
でも盗んだものに価値があるわけではなくて
スリをしたという事実、成功したという達成感、綱を渡るようなスリル
そんなものが彼にスリという行為を止めさせることはなかった
どうしようもない根性の腐ったダメ男で、才能がある人間は犯罪を犯しても許されると信じている
ちゃんと職に就きなさいよと言ってしまいたいけど、彼にはそんな言葉は届かないんだろうな
でも彼は人生のいきがいを失ってしまって、それを埋めるための行為がスリそのものになっていたのかもしれない
虚ろな目をしている彼はどこか人生や社会に諦めのようなものを感じていたのかな
スリを行ってもどこか無感情に見える主人公もたぶん狙ってのことなんでしょうね
スリの犯行を、手を中心に映し出すカメラは無駄がなさすぎて引き込まれました
3人組で列車の中でスリを行うシーンは何度観てもスピーディーで鮮やか
ただ、登場人物たちの描写も同じように無駄がないので、感情の変化がわかりづらいのが難点かな
76分っていう短さもダラダラしてなくていいですね
ブレッソン監督の映画好きー!
私は説明しすぎる映画はあまり好きじゃないから、観てる側に対して説明を埋めさせるような作風は、無駄がないしさっぱりしてる感じ
でも観れる機会が少ないのが困ります