イチロヲ

スリ(掏摸)のイチロヲのレビュー・感想・評価

スリ(掏摸)(1959年製作の映画)
4.0
病床に伏せている母親を養うため、スリ行為に手を染めた青年が、周囲の杞憂を押し退けながら、行為をエスカレートさせていく。本当の意味での「確信犯」を描いている、クライム・サスペンス。

窃盗行為を治外法権として認識するようになった青年の人生模様。たった一度の犯行から、麻薬のような常習性が生み出されていく過程を描きながら、彼の犯行を赦そうとする女性との交流劇が繰り広げられる。

反道徳的行為を成し遂げた自分に酔いしれている感覚、打算的な日常から少しずつボロが出てくる様子、チームワークで流れるようなスリ行為を実践していく展開など、見どころは枚挙に暇がない。

登場人物の一挙手一投足を映像に収める手法は、神代辰巳のルーツと言っても過言ではない。本作にポルノ要素を加えてアレンジしたものが、日活ロマンポルノ「白い指の戯れ」(神代辰巳脚本)ではないかと思われる。

※余談だが、ヒロイン役のマリカ・グリーンは「エマニエル夫人」にてシルヴィア・クリステルとレズビアンの濡れ場を演じている。
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