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THE 有頂天ホテルのおーたむのレビュー・感想・評価

THE 有頂天ホテル(2005年製作の映画)
3.8
「ラヂオの時間」はあまりハマらず、「みんなのいえ」がけっこう面白くて、さて三作目ははたしてどうだろうということで、本作を鑑賞してみました。
んー、微妙な言い方になりますが、面白くなくはなかった、という感じでしょうか。

言うまでもなく、キャストの豪華さ、多彩さは、他に類を見ないほどです。
私も、それほどたくさんの作品を鑑賞してきたわけではありませんが、少なくとも私がこれまでに観てきた邦画のなかでは、これだけのビッグネームが一堂に会した作品はありませんでした。
群像劇という性質上、よくシーンが切り替わる作品であるにもかかわらず、どのシーンでも必ずと言っていいほど、主役級、スター級、重鎮が画面に映っているというのは、ある意味驚異的なことだと思います。
実際、私が見てて一番楽しいと思えたのは、スター同士がこういうコメディ作品で披露してくれるやりとりの部分でしたし。
これまで見た三谷監督の三作品のなかで、お祭り映画として最もゴージャスな作品だったということは、間違いないです。

ただし、ストーリーの方は、小さなエピソードのパッチワークって感じで、噛みごたえはあまりありません。
純然たるコメディであるとはいえ、どうでもいいようなエピソードや、やらなくていいことをやるキャラクターがかなり多く、見終わったあとに「キャストが豪華だったな」以外の記憶が残らなさそう。
もちろん群像劇にも傑作はたくさんありますし、私も「ラブ・アクチュアリー」や「トラフィック」といった作品は、とても面白く観させてもらいました。
が、それらの作品と違って本作は、各エピソードに共通したテーマがない(もしくは、共通のテーマはあるけれどそれほど深く掘り下げられていない)ため、「テーマを多層的に描くことで、より観客に訴えかける」…なんて感じが、あんまりないです。
まあ、本作はそもそも、「メッセージ性のある作品」というところを標榜してなさそうなので、これはこれできちんと意図どおりに作られてはいるんでしょうけどね。
単純に「楽しい時間を過ごしてほしい」っていう作品。

と、いろいろ良し悪し申しましたが、エピソードとエピソードがところどころで繋がって離れて、相互に影響を与えあいながらラストまで持っていく脚本は、さすがに三谷幸喜だなという感じはします。
この規模の大作コメディをちゃんと形に出来るというところは、間違いなく三谷監督のストロングポイントだと思いますし。
軽めの内容でサクッとゴージャス感を味わえるという意味では、なかなかお得なエンタメだとも言えそうです。
みんなで集まって大晦日に見たりしたら、ちょっと楽しいかもしれませんね。
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