ユーライ

ULTRAMANのユーライのレビュー・感想・評価

ULTRAMAN(2004年製作の映画)
4.6
当時の宣伝を見ると、なかなか挑戦的な文言で「大人向けのヒーロー映画を!」と書いてあるが、何回観返してもかなりの精度で達成しているように思う。ただ、明らかに意識下にあるであろう「ガメラ三部作」のような特異点(美術部として参加していた長谷川圭一が脚本を担当)になることが出来なかった理由がよく分からない。和製のリブートは死屍累々という話もあるが、「ガメラ」において興行的に芳しくない事実を解消するために、大局的な「もし怪獣が現実に現れたらどうなるのか?」というリアリズムによるシミュレートを前面に出さず、個人レベルの話を投入したことを思い出したい。その結果、要素が上手く噛み合わず何がやりたいのか焦点が定まらない作品となった『3』だが、たぶん近い現象ではないか。「もしヒーローが現実に現れたら?」と「ハリウッド的な親子話」のどちらに比重を置いても片方が軽くなるバランスが、どっちつかずとして全体の統一感を欠いているのかも知れない……違うか、特殊部隊を出したのがいけないのか。赤い球と青い球で対になるのは原点を踏襲しているのでいいが、真木=ネクストに対して有働=ザ・ワンのバックボーンが薄いのは問題。ネクストが田中秀幸声で喋るのはともかく、クリーチャー然としたザ・ワンが「へへへお終いだな」とかベラベラ喋るのが冷める。これは造形のせいで、「ヒーロー映画」としての要件は満たしていても「怪獣映画」としては全然駄目になっている。都市破壊はあるけど、だってクリーチャーに見えるから。理詰めで考えることによって本来の欠点込みでの味が失せてしまっている。組織に追われる異形(動物の力を取り込む)は『バオー来訪者』みたいで好き。普通人として異形になる過程での恐怖や傍から見た情けなさを描いているのは出色。裕木奈江の湿っぽさ、生っぽさ、「さん」付けするような存在感の主張。あくまで最後まで真木本人のパーソナリティの物語として完結させる誠実っぷり。どこが駄目なのか、やっぱり分からない。
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