Yutaka

ラヴ・ストリームスのYutakaのレビュー・感想・評価

ラヴ・ストリームス(1983年製作の映画)
5.0
カサヴェテスが放つ渾身の、事実上の遺作。こんなにリッチなカットの連続を映画館で見れたことに感激。本物の映画。この映画はまさに一言では形容し難い映画で、愛の在り方を説いている訳だけど、ここで最終的に帰着するのは自己の実存であって、愛は手段なのか目的なのかを解明しようとしている。
主演のロバートとサラのキャラクター設定が上手く対比構造になっていて、2人は血縁関係にあるにも関わらず、全く異なるアプローチで愛を捉えて悩んでいる。ロバートは息子を愛せず、形骸的な性生活を続ける事で、自己愛の欠如を他者への見かけ上の愛で補おうとする。サラは娘に愛を届ける為に、性生活を伴わない形式的な夫への愛を育もうとする。そんな文字通り"空っぽ"な2人が精神的な近親相姦に近い危うい関係を通して回復していく歪んでいながらも真っ当な関係が見ていて微笑ましいし癒される。
今作ではカサヴェテスのコメディセンスが爆発していると思っていて、特にロバートが息子と過ごす時間や、サラがロバートに動物を買い与える1連のシーンの面白さは異常だった。元々、今作も戯曲から始まっただけあって、やっぱり劇っぽさや即興性も感じる。そして、今作で改めてジーナ・ローランズの凄さとカサヴェテスの役者としての魅力を感じた。ジーナの身体性は誰にも真似出来ないし、カサヴェテスの愛嬌は唯一無二。
決まりまくっていたカットも超豪華で、サラのラストの夢のシーンは一生忘れられないと思う。何なんだろうあの人間離れしたスペクタクルは。現実に肉薄する超現実。
そして音楽のセンスも超最高だった。ジュークボックスやばすぎる。
スコセッシやジャームッシュ、濱口竜介への影響を存分に感じる超傑作だった。
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