おおいた自主映画祭2025にて鑑賞した韓国のショートフィルム。長回しワンカットの面白い作品もあれこれ上映された中で、本作はカットが変わるのがものすごく楽しい作品。次にどうなる？と気持ちが乗せられてしまう編集が見事なのだ。

夫との慣れきった生活に不満を感じ始めたヒロイン。ある日、ビンテージの時計が届く。それを手にして振ると、彼女は違う時間にいた。何度か繰り返すうちに過去に戻っていることに気づく。変化を楽しんでいるうちに、彼女の胸には喪失感が。それは夫がそこにいないことだった。

上映時間はたった７分、説明的な台詞は一切なし。だけどストーリーもヒロインの気持ちもちゃんと伝わる。いや、感じ取れると言う方が正しいのかもしれない。

時間跳躍する度に、風景もヒロインの衣装も、とりまく人々も変わっていく。映像的な面白さがあるから、観ているこっちはワクワクさせられる。しかしヒロインの表情はだんだん曇り、焦りすら感じられる。

跳躍した先で気持ちを落ち着かせようと、冷たいドリンクのコップを顔に当てる彼女。映画冒頭ではヒロインの寝顔に氷でイタズラをする夫が出てくる。氷、冷めつつある夫への気持ち→喪失とさみしさ→ドリンクの冷たさ。冷ややかなるものの連鎖が続き、その先にヒロインの気づきが訪れる。

そして微笑みと温もりのラストシーンが待っている。映像の変化と感情の変化、そこに温度という要素が加わる。上手いよなぁ。

時間のずれと喪失感の韓国映画かぁ。勝手に「イルマーレ」を思い出す私である。

空気のような大事な存在。
なくなってみる息苦しさ、本当にそうなっでみて初めて気がつくのだ。

アイデアの独創性とヒロインの感情の機微に触れる演技に惹かれる一作。
このたった7分の映画を120分ほどの映画に延ばしても面白いのが作れそう、『ファーストキス』みたいな。それくらい調理のしがいがある良いアイデア作品なのでは。