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Duse(原題)
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『Duse(原題)』に投稿された感想・評価

[イタリア、死に場所を求めて放浪する大舞台女優の晩年] 40点

2025年ヴェネツィア映画祭コンペティション部門選出作品。ピエトロ・マルチェッロ長編四作目。イタリアの舞台女優エレオノーラ・ドゥーゼの晩年を描く。物語は第一次世界大戦の前線に慰問に訪れる場面から始まる。そこで傷付いた兵士や彼女の大ファンだったかつての知り合いである若き詩人ジャコモなどと出会い、8年ぶりの舞台への復帰を決意する。戦争で傷付いた者や孤児/寡婦に手を差し伸べる場所としての演劇を目指したらしい。かつての友人たちと共に仕上げたイプセンは大盛況だったが、サラ・ベルナールは彼女に"美術館にでも来たかのようだ"と辛辣に言う。それならばとジャコモに脚本を書かせて実験的な新作を上演するも酷評され、あっさり彼を切って次の舞台に備える。そうしているうちにも彼女の病状は悪化の一途を辿り、演劇を嫌い母親を心配する娘との距離もどんどん離れていく云々。ドゥーゼは役にのめり込むことで自然な演技を行うことで有名らしく、この最晩年の暴走っぷりを見ると私生活でも常に演技を続けていたようにも思える。戦争で傷付いた者たちに云々というのも建前で、本当のところは彼女が死を意識した際に"舞台上で死にたい"と思ったことで、死に場所を求めて放浪しているだけなのだろう。彼女はかつての恋人ガブリエーレ・ダヌンツィオがフィウメ占領と撤退をしたことについて否定的だったが、舞台に立てるなら彼すらも利用し、利用価値がないと判断すればすぐに捨てている。彼女の名声と死に場所を探すためなら手段を選ばない態度が、周囲から利用され、彼女もそれを利用しようとする。ヒステリックな狂信者演技に定評のあるヴァレリア・ブルーニ・テデスキが最初から最後までずっとガンギマったままウロウロしているので、もはや恐怖映画である。比較的予算があるので美術は豪華なのだが、そもそもドゥーゼがここまで称賛に値する人物なのかは描かれていない。私生活での彼女は現実に向き合うことを拒絶し、夢の中で生きている人物として描かれているからだ。健康を気遣う娘を拒絶し、なんとしても舞台に復帰させようとするアシスタントのデジレを娘のように扱うのも、かなりクドく描かれている。ダヌンツィオやムッソリーニといった人物たちの政治思想は全く触れず、パトロンになってくれるから靡いていくという危うさをそのまま描いているのも謎。退屈なコスチューム時代劇がまた一つ増えただけという印象に留まる。