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スターリングラードのクリームのレビュー・感想・評価

スターリングラード(1993年製作の映画)
4.1
これは凄い。こう言うのが観たかった。戦争映画って、敵に対する怒りを描く事が殆どだけど、これは怒りが味方の上官達に向いて行く。兵士達の本音が見えるそんな作品でした。地味だけど真のリアリティのある戦争映画。勿論、見応えのある戦闘、残酷でグロいシーンもあります。そして、これはプロパガンダ的な作品ではないからこその作品、傑作でした。

1942年。 士官学校を出たウィッツランド少尉は小隊長に任命され、初の実戦で激戦区スターリングラードへ向かいます。 彼の率いる部下はライザーやロロ軍曹等、精鋭揃い。 現地に到着すると憲兵のロシア人捕虜に対する非人道的な扱いに抗議するも逆に殴られたウィッツランド。上官のハラー大尉に訴えても、自らの小隊が属するムスク大尉に訴えても取り合って貰えません。そして、市街戦が始まるのでした。



ネタバレ↓
(長いです💦)


ムスク大尉の命令で工場を占拠する事となります。ソ連軍の激しい攻撃に死傷者が続出。 ウィッツランドはソ連兵に一時休戦を呼びかけ、お互いの負傷者を救出しますが、1人のドイツ兵が裏切り無防備なソ連兵を撃ち、再び銃撃戦が再開されます。やがて中隊はソ連軍に包囲され、ウィッツランド達は、下水道から突破する事になります。怪我人を野戦病院へ運び、ライザーが軍医を脅し仲間の手当てをさせたので、ウィッツランド達は懲罰部隊へ送り込まれました。
懲罰部隊では地雷除去作業をさせられ、屈辱的な扱いをされます。
ムスク大尉がマリノフカのソ連軍を撃滅すれば、懲罰部隊から解放すると言うので、彼等は戦いに挑みます。
ソ連軍戦車部隊に対し、戦車砲一門とタコツボ壕に潜み、吸着地雷や火炎瓶で戦います。そして奇跡的に勝利します。
ハラー大尉は、無実のロシア民間人達と捕虜の少年の処刑をさせました。
ドイツ軍の行いに耐えられなくなったライザーは脱走を決意。ウィッツランドと新兵ミュラーも一緒に行きます。
彼等は、輸送機で脱出しようと試みますが、最後の便に乗れず、戻ります。
補給物資が落ちて来て、回収しているとハラー大尉がやって来て、撃ち合いになり、ミュラーが亡くなります。ハラー大尉は命乞いをし、隠した食糧の場所を教えますが、ライザーがハラーを撃ち殺します。
皆でそこに移動。足が壊死して重症のムスク大尉も連れて行きます。1人は自殺し、ムスク大尉とロロは外の空気を吸いに出て死亡。残りのウィッツランドとライザー、捕虜のロシア女性で逃げ出しますが、女性は味方に撃たれ死亡、ウィッツランドとライザーは雪の中力尽き亡くなります。

序盤のスターリングラード工場地帯の市街戦も凄いけど、中盤の雪原での対戦車戦は、激しく見応えがありました。圧倒的に不利な中、手に汗握る戦いで、身体が真っ二つに吹き飛んだりします。どちらが悪いと言う描き方ではなく、ドイツ軍を死に追いやったのは、ドイツ軍上層部だと言う描き方なのが良かったです。戦争時に亡くなる時、兵士達は、家族や愛する人を思って亡くなります。本音は国の為に等である訳無いのです。本作は、建前のみ作品でなく、兵士達の本音が見え、あまりに人として理不尽故に耐えられず脱走を選ぶ人間らしさを描いた貴重な作品だと思います。ラストも悲しくこれが戦争なのだと言うのも好みでした。かなりの良作でした。

*のんchan、こたつムービーさんありがとうございました*
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