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恒星の向こう側
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恒星の向こう側の作品紹介

恒星の向こう側のあらすじ

母の余命を知り故郷に戻った娘・未知は、寄り添おうとしながらも拒絶する母・可那子と衝突を重ねる。夫・登志蔵との間に子を宿しながらも、亡き親友への想いに揺れる彼の姿に不安を募らせる未知。母の遺したテープから“もう一つの愛”を知ったとき、彼女は初めて母を理解し、母から託された愛を胸に進んでいく。

恒星の向こう側の監督

中川龍太郎

原題
Echoes of Motherhood
製作年
2025年
製作国・地域
日本
上映時間
91分
ジャンル
ドラマ
配給会社
ナカチカピクチャーズ

『恒星の向こう側』に投稿された感想・評価

人間とは身勝手なもので、子どもを育てるのは「子どもが欲しかったから」「子どもができたから」という理由に過ぎないことが多いのではないだろうか。「このすばらしい世界を見る命を一人でも増やしたい」などという崇高な動機で子どもを生む人間が、果たしてどれだけいるだろう。“大人”なんて立派なものではない。子どもができようと孫ができようと、人間など等しく大した存在ではないのだ。結局何歳になろうと個は個であり、思い悩み、気を病み、社会の荒波や自身の感情の波に翻弄され続ける——そんな人間の姿こそが現実ではないか。

本作で描かれる親子もまた、側から見れば完全に関係は破綻している。“ギクシャク”どころではない、最悪の親子関係の状態で物語の幕は開くのだ。

映画監督・脚本家として知られる河瀨直美が演じた可那子は、過去の秘密と短い余命を抱えた母親だ。病気を知った娘・未知が彼女の元に戻ってくるが、親子関係は驚くほど険悪である。可那子は当初、娘の世話になる気もなければ家に泊める気すらない。口を開けば嫌味ばかり——娘の未知も嫌気がさすばかりだ。どのような事情があろうと、母親としては態度が悪すぎるし意地悪すぎる。しかし、どこか不器用で思うことがあるというだけで、娘のことを全く思っていないわけではないこともわかってくる。時折、人間の核心を突くようなセリフを投げかける。そんな複雑な人物を、河瀨は印象的な演技で体現している。

未知と夫の関係もまた、なんとも言えないちぐはぐ感を常に醸し出している。そこに可那子が不器用に思いを投げかけるのだが、この夫婦役を福地桃子と寛一郎は繊細な演技で演じきっていた。特に寛一郎の「言えない何か」を抱えながらのらりくらりと生きようとする夫の演技は見事の一言で、冒頭から観客に「何かおかしい」という違和感を抱かせる絶妙なバランス感覚を見せていた。

そして、未知が知らない思いを抱えているのは母親・可那子も同じだ。一本のテープを通じて、未知が母の抱えていた“もうひとつの愛”を知っていくという構成は非常に詩的で、その世界観をharuka nakamuraによる音楽と丁寧な撮影が深く引き立てている。反発しながらも同じ影を追っているような母娘の髪型の一致、追いかける構図——こんがらがりながらも繋がりを感じざるを得ない親子関係を演出する映像表現が非常に印象的で、セリフ以上に映像が雄弁に語る一作だと言えるだろう。

人それぞれ、どのような生き方をするか。誰かを断罪しようとするでもなく、それぞれの苦悩と、リアルな温かくて冷たい人間関係を描写し共感を誘う——そんな誠実さと詩人的センスに満ちた映画作品だった。

---
観た回数:1回
3.7
映像は綺麗だったが、物語はあまりスっと入ってこなかった。
少し詩的、抽象的すぎるのかな?自分には少し早いのかな。
母親の冷たさが愛情の裏返しとかでもないように感じたし、それに反発しつつも寄り添う娘の気持ちのニュアンスが掴めないまま最後の方に向かっていってしまった印象。
俳優陣の演技は素晴らしかった。それをもってしても余りある空白を、埋めるほどの想像力と経験が自分にはまだないのかもしれない。
なんだかんだ序盤の久保さんが特に印象に残っている。贔屓目なしに良かった。
2.5
【宗教的救済の意味を理解する時の神秘性】【東京国際映画祭】
■あらすじ
『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(15)、『四月の永い夢』(17)で鮮烈な印象を残した中川龍太郎監督が挑む三部作の最終章。母の余命を知り故郷に戻った娘・未知は、寄り添おうとしながらも拒絶する母・可那子と衝突を重ねる。夫・登志蔵との間に子を宿しながらも、亡き親友への想いに揺れる彼の姿に不安を募らせる未知。母の遺したテープから“もうひとつの愛”を知ったとき、彼女は初めて母を理解し、母から託された愛を胸に進んでいく。

■みどころ
末期がんの母と母になろうとする娘のお話。
物語は末期がんになった母のことを心配してかけつける娘とそれに対してやたら拒絶しまくる母のやり取りを中心に映す。
前半では母が過去に尊敬していた先生とのやり取りをカセットテープごしに想起させるシーンを挿話しつつ、現代の時制で末期がんの治療をめぐって母と娘の対立が続く。
後半になるにつれてカセットテープに込められた想いについて少しずつ理解が進み…というお話。

たい焼きの『静かな雨』、銭湯の『わたしは光をにぎっている』など昔の日本のノスタルジックな雰囲気を映画に組み込むのが上手い監督さんだが、本作はカセットテープとピアノというアナログでノスタルジックさで世代間の対立と継承、拒絶と受容などの変化を与えるきっかけになるツールとして機能していて演出とテーマ性において良いなと思いました。

家族の映画ではあるが割と個人の内面に存在する宗教的なお話が強いかも。
それぞれに信仰があり正しい事と踏み入れたい事、それを拒絶する想いが交錯する親子の関係に宿る映画だなと。
目上の人が語る信仰の意味を理解できず怒る姿とか、互いの信仰を少しずつ尊重する姿は愛おしいのだが…

ごめんなさい。この映画の帰結、すげー嫌いです。
精神的な繋がりの大切さとか信仰の大切さは確かに大事だし、アナログで既視感がある手法と言えどもテープの録音が繋ぐ要素は良いなと思う。

でも精神的な繋がりを他者に簡単に共有しようとする押し付けがましさ・こうすれば感動するだろ?なあざとい演出の魂胆が透けて見える姿がノイズに感じる。
この映画で行われる神秘的な個人の内面の世界を劇にする配慮の無さ、衝突して和解するプロセスの浅さ、同じ景色を見たからと感情が揺れる1種のこじつけ、終盤の正直になる事で告白する禁忌と許す浅はかさ…が反吐が出そうなくらい嫌い。

本当に四月の永い夢を作った人なの?と思うほどにポエミーで起伏がインスタントで悲しくなりました…

フォロワーで河瀨直美がスピり倒しまくる作品と評していたけど、スピって周りを困惑させたり感情を吸い込ませる意味で一種のカルトぽさも感じた。

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