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老兵は死なずのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

老兵は死なず(1943年製作の映画)
2.0
No.169[三人のデボラ・カーと巡るおじさんズの恋愛年代記と三つの戦争、パウエル=プレスバーガー映画祭③] 40点

想像の通りのプロパガンダなんだけど、初恋の人を忘れられないおじさんズの恋愛年代記でもある。演出映像台詞プロットのどれをとっても2位くらい(既に1位がいるという感じ)に収まってしまういつものパウエル=プレスバーガー作品だった。面白いんだか退屈なんだか分からないってのが彼らの特徴なんだろう。

まず、軍事演習を0時に開始するという予定を若い隊員たちが"敵(ナチ)は予定通りに戦争なんか始めない"と屁理屈捏ねくり回して前日18時に敵側担当である主人公キャンディ少将を捕虜にするというトンチンカンなオープニングで本作品は幕を開ける。演習は勝ち負けではなく戦争が始まったという仮定の下どう動くかという話だと思うのだが、そんなことは関係ないらしい。アホか。ここで見るの止めたメイツも多くいるんだろうな(斯く言う私もその一人)。

①ボーア戦争直後(1902年)
オープニングには吐気がするけど第一部の出来は中々。デマによって侮辱された威信を取り戻そうとキャンディはベルリンへ向かい、エディス(一部デボラ)と共に侮辱し返したために、クジで選ばれたシュルドルフと決闘になる。シュルドルフとキャンディは引き分けとなり病室も隣だったことから親友となる。エディスとシュルドルフは結婚し、キャンディはエディスの面影を一生引きずることになる。
んなアホな、という展開に目を瞑るとイギリスカラー映画の底力的な画面構成や配色を楽しめる。また、この時代には珍しくドイツ語と英語の使い分けがしっかりしていて、言語間かくれんぼも興味深かった。


②第一次世界大戦時代(1918年)
第一次世界大戦で前線を巡っていたキャンディは捕虜の中にシュルドルフを探し、寄った修道院で従軍看護婦のバーバラ(二部デボラ)を発見する。丁寧だった一部に比べて描写が少ないし、一瞬でバーバラと結婚するのは納得がいかない。敗戦国ドイツについて嘆くシュルドルフを英国軍要人が総出で慰めるシーンは爆笑した。剥製で時間経過を表すのも面白い。
でもやっぱり、第一部に勝てない。


③第二次世界大戦時代(1943年)
エディスもバーバラも亡くなり、独り身になったおじさんズ。シュルドルフはイギリスに亡命し、軍を解雇されたキャンディと共に国防市民軍を組織する。そうしてアホな冒頭に戻ってくる。老兵の様な凝り固まった考えは古い!ナチはどんな下劣な手段でもそれを使ってこっちへ来るんだ!勝てば正義だ!みたいなプロパガンダなんだろうか。それならとっととナチどもを捕まえて戦争を終わらせろと思ってしまうのは私だけじゃないだろう。"俺も昔はあんな感じだった"と雑に丸めて終わらせちゃうが、論点がズレていることは部下によく言っておいたほうが英国のためだ。
キャンディの専属運転手としてアンジェラ(三部デボラ)が登場し、それを見たシュルドルフも"あーそういうことね"と納得する。そして、彼女の恋人が冒頭でキャンディを捕虜にする若い将校だ。こうしてデボラ・カーの系譜と共に老兵の知恵と平和への願いは受け継がれていくんだろう。お見事。


パウエル=プレスバーガーって前述の通り面白いんだか退屈なんだか良く分からないって印象なんだけど、本作品も御多分に漏れずそんな感じ。悪い作品でないことは保証するが、胸を張って名作だとも考えにくい。

追記
Generalに対する"准将"と"少将"の表記揺れがなんともイライラさせてくる。
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