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プレシャスのkabcatのレビュー・感想・評価

プレシャス(2009年製作の映画)
3.7
貧困、親からのネグレクトや性的虐待など主人公の少女はこれでもかと言わんばかりに悲惨な状況に追い込まれているのに、ずっしりとした重苦しさはあまり感じられず、主人公の少女もどこか淡々として見える。が、それは少女が自分の苦しみをことばにして表現する術を持っていなかったからである。読み書きを覚えて、自分の空想の世界に閉じ込めていた思いを次第におもてに出していくことで、彼女はようやく自分を客観的に見つめることができ、自分の置かれていた状況を悟ることができたのだ。
初めほとんど人前で話すことのなかった彼女が、先生や仲間たちの前で流暢に話すようになり、自分のことしか考えない母親と決別するとき、どれほど大人に見えることか。お涙頂戴の物語にもありふれた成長物語にもなっていない、優れた脚本の映画だと思う。
マライア・キャリーもレニー・クラヴィッツも、見終わったあとで出演していたことを知り、驚いた。それだけスターのオーラを消して、市井の人を演じきっているということか。キャストもなかなかよかったです。
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