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戦場の小さな天使たちの一人旅のレビュー・感想・評価

戦場の小さな天使たち(1987年製作の映画)
4.0
ジョン・ブアマン監督作。

二次大戦時のイギリスを舞台に、7歳の少年ビリーの日常を描いた戦争ドラマ。

ジョン・ブアマンとは相性が悪い。『脱出』(1972)は好きだが、ブアマンが撮るSF・ファンタジー映画のチープな映像と世界観が好きではない。そのため『未来惑星ザルドス』(1974)や比較的評価の高い『エクスカリバー』(1981)は全然楽しめなかった。

本作は戦時下のロンドンで家族と暮らす一人の少年の目を通して戦争を描いた異色の戦争映画。戦争が絶対悪であることに疑いはないが、子ども目線から見た戦争と大人目線で見た戦争では、その意味合いに大きな違いがあることを教えてくれる。

本作を観て思い出したことがある。私の祖母は小学生の時に戦争を体験した。例によって昔はよく自身の戦争体験を話してくれたが、その中で一番印象に残っているのは「楽しい」という言葉だった(逆に言うとそれしか覚えていない)。空襲警報が鳴ってみんなで避難する時もなぜか楽しかった、と言っていた。子どもの頃の祖母にしてみれば、戦争の本当の意味や空襲が命に危険をもたらす事実を充分に理解できるはずがない。そうした子どもならではの“無知”が、戦争を違ったものに見せていたのかもしれない。

私の祖母同様、本作の主人公・ビリーも子どもならではの目線で戦争を目撃する。学校で退屈な授業中、突然空襲警報が鳴り響き、先生の指示のもと防空壕に向かって一斉に走り出す子どもたち。だが、子どもたちの顔は満面の笑みで、警報という名のチャイムのおかげで授業が中止になったことを心から喜んでいる様子。空襲によって母親を殺された女の子に向かって、「君のお母さん、死んだんでしょ?」「遊ぼうよ!」と言う無神経さ。しかし、発言した子どもに悪意はなく、身近な人の死を知らない子どもだからこそ可能な言動だ。他にも、ドイツ軍の巨大な気球を見て大はしゃぎしたり、上級生の女の子を相手にちょっとエッチな体験をみんなで共有したり、空襲で瓦礫の山と化した家で遊んだり...。
クライマックスで少年が叫ぶ「ありがとう、ヒトラー!」の言葉が強烈に印象的で、イギリスに空襲を仕掛けるドイツ軍の敵意を、子ども特有の無邪気さが一挙に蹴散らしてしまう瞬間だ。

戦争中にも関わらず、ロンドンの子どもたちは楽観的で元気いっぱい。周りの大人たちが戦々恐々とする中、子どもたちだけはいつもの無邪気な生活と何ら変わらない。本作と同時期に製作され、戦争が無慈悲に子どもを巻き込んでいく様子を静謐な映像で描いた、ルイ・マル監督の『さよなら子供たち』(1987)とは対照的なテーマ・作風の作品。本作で描かれる戦争と、『さよなら~』で描かれる戦争は、楽観と悲観の差はあれどどちらも真実だ。
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