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幻の薔薇のakrutmのレビュー・感想・評価

幻の薔薇(2009年製作の映画)
3.7
第二次世界大戦後のフランスを舞台に、都会での素敵な生活を理想とする女性マージョリーヌと、将来的に故郷でバラ農家を継ぎたい夫のダニエルの行方を描いた、アモス・ギタイ監督の恋愛ドラマ映画。貧しい家庭に生まれたマージョリーヌが、理想とする生活を実現するために、マンションの部屋や家具類などに浪費していき、借金を背負うようになる。一方で、夫のダニエルは、そういう俗物的な欲求とは無縁で、薔薇の品種改良に没頭している。この夫婦の行方は容易に想像することができるだろうし、割とありふれた対比だと言えよう。原作はフランスの作家エルザ・トリオレの同名小説であり、小説ではこのようなストーリーの中に戦後フランスの消費社会や都市化への批判が込められているだろう。

しかし、ストーリーをわかりやすく表現しようという意図のなさそうな映像を見るだけだと、小説に込められたこれらのメッセージは感じられないかもしれない。特に、マージョリーヌの家族の描写がとてもわかりにくく、結婚以前に抱いていた彼女の理想や心情がイマイチ伝わらないのが残念。本映画はTV用に作られた映像である(実は劇場公開用にもっと長い別バージョンが制作されているが、劇場公開が認められずお蔵入りになっているそうである)ことが影響しているのかもしれない。

そんなことを考えるよりも、レア・セドゥの美しさを堪能するための映画と思えばよいであろう。冒頭のりんごをかじるシーンから美しいし、惜しげもなく美しいヌードを披露している。個人的にはレア・セドゥにもっと違うキャラを演じてもらいたいが、この映画はこれで十分良いだろう。レア・セドゥの他にも、アリエル・ドンバール、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、エルザ・ジルベルスタインなど、私の好きな女優さんがいっぱい出演しているのには、驚いた。なかなかセンスが素晴らしいぞ、アモス・ギタイ監督。
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