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八月の声を運ぶ男
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八月の声を運ぶ男の作品紹介

八月の声を運ぶ男のあらすじ

1000人を超える被爆者の声を未来に繋ぐ男がいたー 高度経済成長を遂げた1972年の日本。日本人の誰もが豊かさを追い求めていた。その時代の流れに逆らうかのように、長崎の放送局出身のジャーナリスト・辻原保(本木雅弘)は被爆者の声を集め出す。しかし、当時はまだ原弾の記憶はあまりにも生々しく、その悲惨な体験を語ろうとする者は少なかった。そんな時代における被爆者体験の記録、それは周囲からも理解されない孤独で過酷な作業だった。 その最中、辻原は一人の被爆者・九野和平(阿部サダヲ)と運命的な出会いを果たす。九野が語る「声」に感銘を受け、心を激しく揺さぶられる辻原。一方で、その「声」は多くの謎にも満ちていた。 これは原弾が投下され、数十年経ってもなお、消えることのない戦争の記憶に翻弄されたふたりの男の数奇な出会いを描いた、事実に基づく物語である。

八月の声を運ぶ男の監督

柴田岳志

原題
公式サイト
https://www.wowow.co.jp/film/august/
製作年
2026年
製作国・地域
日本
上映時間
102分
ジャンル
戦争伝記
配給会社
WOWOW

『八月の声を運ぶ男』に投稿された感想・評価

kuu
3.7
『八月の声を運ぶ男』
製作年 2026年。上映時間 102分。
映倫区分 G 製作国 日本

長崎に暮らし日本全国を渡り歩いて被爆者の声を集め続けたジャーナリスト・伊藤明彦の実話をもとに、原爆によってもたらされた数奇な出会いの物語を描いたヒューマンドラマ。

情報が溢れかえるにつれ悲劇は無機質な数字やデータへと成り下がっていく。
現代って時代のスピード感の中じゃ、過去の記憶を次代へ手渡すことの絶望的な難しさに直面せざるを得ません。
それでもなお、伝えることの途方案内過酷さに打ちのめされながら言葉を紡ぎ続ける行為てのは、理屈を超えた人間の尊厳と尊さが溢れていると思います。
 
今作品で提示されるんは、長崎の街にひっそりと残る静寂。
主人公・辻原を演じる本木雅弘の、身を削るよな佇まいが画面の空気を一変させ、彼を取り巻く石橋静河や伊東蒼の透き通るような切実さ、尾野真千子や田中哲司、阿部サダヲらが放つ人間の業や葛藤を煮詰めたような泥臭い演技が見事に噛み合い、単なる綺麗事ではない重層的なドラマが立ち上がっていました。
かつて広島の地に生を受け、人間の業を骨太に描き続けてきた池端俊策による脚本は、歴史の教科書じゃ掬い取れない個人の生々しい痛みってのをを容赦なく浮き彫りにしてみせてます。
 
この映画は単なる過去の再現にとどまらず、八月という灼熱の記号と、当事者たちが心の奥底に押し込めてきた声を胸に刻み込み、辻原が泥にまみれて奔走する姿へと視点は移ってゆく。
周囲の冷ややかな目や無理解に晒されながらも、忘れ去られようとする叫びを拾い集め、愚直に背負い続けるその歩みは、単なる記録の伝達ちゅうよりも、消えゆく魂を文字通り泥まみれになりながら未来へ運ぶ執念の作業そのものでした。
 
ただ、淡々と進む展開に物足りなさを覚えたとこも正直あったし、全編に漂う息苦しさに肩をすくめたくなる瞬間があったんは否定できません。
娯楽映画らしい爽快感や手軽な涙を期待して観に行けば、出口のない重苦しさに足元をとられ、思わずため息が漏れてしまうかもです。 
けど、その派手さを削ぎ落とした武骨な姿勢に、安易な感動の安売りに逃げない作風の覚悟と誇りが宿ってるんじゃないかと感じます。
 
風化の波は容赦なく押し寄せ、当事者が減る
情報が津波のように流れては消えるいまの世の中で、誰かの沈黙にじっと耳を傾ける行為はあまりにも贅沢で、そして苛烈です。
中々できませんが、立ち止まることを恐れず、過去の悲劇を他人事として切り離さずに受け止める覚悟。
忘れ去られる運命に抗い、託された記憶を次へと繋ごうとする熱量に触れ、胸の奥底にくすぶっていた感情が静かに、だが確実に燃え上がるのを確かに感じた作品でした。


2025年8月にNHKで放送され、第34回橋田賞をはじめ数々の賞に輝いたテレビドラマを、未公開シーンを追加し登場人物たちの内面をより深く掘り下げた映画版として公開する。
SCREEN6

パンフレット販売なし
記憶を言葉にして伝えることの大切さと重さ、そして危うさをひしひしと感じた作品だった。

人の記憶はいとも簡単に世の中から忘れ去られていく。
それはかつてない悲劇であった原爆ですらも同じことだ。
気がつけば、誰もが原爆のことを忘れていく。
だからこそ、それを伝えていくことはとても大切なことで、主人公辻原の行動も支持したくなる。

でも、記憶を形に残すということは、言うほどには簡単なことではない。
被爆者のなかには、被爆したこと自体を隠したいと思っている人もいる。
あまりに悲惨なその時のことを、もう思い出したくないという人もいる。
「なんで過去をほじくり変えなければいけない。あんたはそれをどうしたいんだ?」
辻原に向けて投げられる被爆者の言葉は、とても否定できるものではない。

そういう葛藤を抱える辻原の前に現れ、被爆のことを語り出す九野。
彼の話の重さが、映画の核心になっていく。
被爆の様子を再現して映像で見せれば、インパクトも衝撃も大きくなる。
映像はリアリティという強力な武器を持っている。
一方で、言葉にはそこまでのリアリティはない。
しかし、言葉は、想像力をどこまでも広げていく、別の巨大な力を秘めている。

すべてが語られないこそ、その悲劇はより強烈なものとして胸に響いてくる。
頭の中に広がるシーンは、映像化不可能なほどに強烈で、さらに心情と重なり、とてつもないものになる。
阿部サダヲの圧巻の演技もあり、言葉の持つ凄みとある種の暴力性が爆発している。

と同時に、映画は言葉が持つ危うさもこれでもかと描いていく。
人の記憶は簡単に別な物へと変わっていく可能性がある。
主義主張で歪められることあるだろう。思い違いということもあり得る。
そう記憶していかなければ生きていけなかった、という場合だってある。

映像は噓をつきづらいが、言葉は違う。
強烈で、あやふやで、信頼に足らず、でも真実でもある。
疑いの目を向ける辻原に対して、九野は「僕の語っていることは全部本当のことなんだ」と声を荒げる。
それは言葉というものが持つ意味、言葉の重さ、そして正体をも指摘しているひと言だと思った。

戦争の悲劇を後世に伝えていくことは、人としてしていかなかければならないことだろう。
でも、同時に、伝えるということがどういうことで、どういう意味を持つものなのかも考えていかなければいけない。
そんなことを思いきり考えさせられた、衝撃的な映画だった。

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