MovingMovies

戦争のはらわたのMovingMoviesのレビュー・感想・評価

戦争のはらわた(1977年製作の映画)
4.5
戦争映画は轟音と怒鳴り合いに包まれていることが多いけれど、本作では平和な日曜日の朝のような静寂の中をゲリラ部隊のような小隊が作戦行動をとるシーンが描かれる。

スローモーションをクライマックスのシーンではなく、何気ないシーンに使うことでリズムに緩急をつける。シンコペーションのように。
あるいは人の顔に爆発する光を重ねるオーバーラップ。
錯綜した意識を表すのか同じ場所が急に無人になるシーンが何度も挿入される。

看護婦センタ・バーガーが言う。「戦争がないと怖いの?」

乾杯するシーンが何度か映される。健康のため、戦争の終結、昇進のため、誕生日、愛する者たちのためと次々と言葉が口にされる。ジェームズ・コバーン演じるシュタイナーには当てはまらない言葉ばかりだった。帰る家はない。昇進しても意に介さない。ここが俺の世界。戦場がホームになっているかのように。

奇妙なことに、誰も勝利のための乾杯を口にしない。個人的ないがみ合い、秘密にしている同性愛指向、昇進への執着、男たちの性欲。そんな身もふたもない「はらわた」に囲まれて、敗走するための戦争は続く。

途中ちょっと長いなと感じる場面もあったが、ジェームズ・コバーンは、センタ・バーガーのセリフをなぞりながら、予想を裏切るやり方で一線を越えてゆく。