【第30回カンヌ映画祭 パルムドール】
『グッドモーニング・バビロン!』『塀の中のジュリアス・シーザー』で知られるタヴィアーニ兄弟による作品。言語学者ガヴィーノ・レッダの自伝的小説を映画化した作品。後に監督としてパルムドールを獲得するナンニ・モレッティも俳優として出演している。
掛け値なしの傑作!中盤少し中弛みは感じたけど、音の演出が素晴らしく最後まで目が離せなかった。
パードレ(父)でありパドローネ(主人)でもあった父から自立するまでを趣向を凝らした演出でみせた意欲作。
本人は勉強がしたいのに、父に無理やり羊飼いにさせられる展開はかなりキツいものがあり、正直もう一度観たいとは思わない。体罰は当たり前、持ち場を離れただけで叩かれる。
アコーディオンやラジオといった音楽、心の声か言ったセリフなのかが曖昧な演出、羊に喋らせるといった挑戦的で面白い音演出が素晴らしい。
それ以外にも引きのカメラで捉えた走るシーンやアコーディオンを入手するくだりの移動など美しくクスッとしてしまうようなシーンもあり隙がない。
父は父なりに愛していたというのを示す冒頭とラストのシーンの繰り返しの持つ意味の違いはとても映画的。
もちろん言語学者の自立というパーソナルな物語でもあるけど、家父長制からの脱却という大きな社会の変化を捉えた作品とも言える。
タヴィアーニ兄弟作品は初鑑賞だけどかなり刺さった。