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ル・ミリオンの一人旅のレビュー・感想・評価

ル・ミリオン(1931年製作の映画)
5.0
ルネ・クレール監督作。

1930年頃のパリを舞台に、大当たりの宝くじの入ったボロ上着を巡って繰り広げられる騒動を描いたコメディ。

どうしても観たい観たいと思っていて、なかなか鑑賞する機会がなかった本作。この度オークションで中古DVDを\2,500で購入! ようやく鑑賞できました。

本作は1930年代のフランスを代表する映画人、ルネ・クレール監督によるシネ・オペレッタ風の人情喜劇で、ヒロインのバレリーナ、ベアトリス役を『巴里祭』のアナベラが可憐に好演している。ルネ・クレールらしさが詰まった愉しい逸品で、パリに生きる市井の人々が織りなす一大騒動を、人情・ロマンス・ユーモア・ドタバタに溢れた躍動感のある描写で映し出す。

パリで友人の彫刻家プロスペールと共同生活している借金まみれの貧乏画家ミシェルは、恋人のバレリーナ、ベアトリスに預けた自身のボロ上着の中に大当たりの宝くじが入っていることに気づく。しかし、ベアトリスに確認すると、上着は既にスリ集団の頭領である“チューリップおやじ”の手に渡っていた...という【行方不明のボロ上着を巡る騒動】を描いたお話で、上着の持ち主がベアトリス→チューリップおやじ→オペラ歌手とコロコロ入れ替わるさまがコミカル。上着を狙う連中も多数存在して、“ミシェル&ベアトリス”コンビ、“プロスペール&玉の輿狙い美女”コンビ、“チューリップおやじ&手下たち“の計3組の欲深い連中が一着の上着を巡って熾烈な争奪戦を繰り広げる。

多数の人間が入り乱れながら上着を奪い合う場面がラグビーの試合風景のように見えたり、オペラ座で公演中のオペラの歌詞が、舞台裏で寄り添い合うミシェルとベアトリスの愛の会話とシンクロしていくなど、軽妙洒脱でユーモラスな演出が魅力的。大金欲しさに長年の友人を平気で裏切るなど、少し冷たい人間関係も描かれるが、最終的には全員揃って仲良く大団円。生きる歓び、愛する歓び、そしてそこにお金があったらもっといいよね~的結末が人間らしくて好き。とにかく、これぞクレール!と言わんばかりの洒落た演出が目白押しなので、クレールファンなら是非押さえておきたい逸品だ。
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