佐藤克巳

腰辨頑張れの佐藤克巳のレビュー・感想・評価

腰辨頑張れ(1931年製作の映画)
5.0
成瀬巳喜男監督の出世作となった記念すべき作品だが、後年の派手さを捨て去った彼の作風とは違い、フラッシュバック等映像処理の鮮烈さは、同じ短篇作品の名作「新学期・操行0」に先んじ、同年小津安二郎「東京の合唱」と並ぶ松竹小市民映画の傑作。保険外交員山口勇は、息子加藤清一におもちゃ一つ買ってやれず、家賃滞納に悩む妻浪花友子を抱えた極貧家族脱出に奮起、革靴の穴を新聞紙で埋め、狙いの中流家庭奥様の5人の子供巡って、同業者関時男と保険金争奪戦を展開する。息子は広っぱでゴム動力の飛行機遊びの仲間外れに憤り喧嘩に勝つが、駆け付けた山口は先の子供と知ると平謝りする。近所の噂で電車に跳ねられた子供をネタに保険契約に成功し息子に飛行機を買って帰宅。跳ねられたのは息子だった。病院で生死を彷徨う息子と山口の対話がフラッシュバックの最高潮、息子は甦った。或いは、「生まれてはみたけれど」にインパクトがあったのでは?
佐藤克巳

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