Inagaquilala

父と暮せばのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

父と暮せば(2004年製作の映画)
4.0
原爆が投下されてから3年後の広島。自分だけ生き残った娘(宮沢りえ)と幽霊となって現れた父親との会話で物語は進む。原田芳雄演ずる父親のセリフは時折ダジャレも混じり、とにかく幽霊とは思えない明るさ。自分だけ生き残った自責の念にとらわれネガティブな考えの娘に対して、父親はポジティブに生きることを娘に望む。もともとが井上ひさし氏の戯曲が原作だけに、映画はほとんどが宮沢と原田の会話で進む。シチュエーション的にはあり得ない設定なのだが、ひじょうにスムースにふたりの会話が心に入ってくるのは、やはり井上ひさし氏の原作を忠実に再現したせいだろうか。もちろん、ともすれば単調になりがちな画面を素晴らしいカット割りで観る者を飽きさせることない、黒木和雄監督の手腕も素晴らしい。時折、挿入される娘が勤める図書館のシーンは効果的だ。公開当時、岩波ホールでロングランされていたのが記憶に残っているが、もう少し早く観ていたらと、やや後悔した。
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