きゅうげん

ドラキュラのきゅうげんのレビュー・感想・評価

ドラキュラ(1992年製作の映画)
4.2
フランシス・フォード・コッポラ監督が「ダーク・エロティック・ナイトメア」をテーマに再構築した『吸血鬼ドラキュラ』。

キアヌ&ウィノナのハーカー夫妻
 &
アンソニー・ホプキンスのヘルシング教授
 vs
ゲイリー・オールドマンのドラキュラ伯爵
……という豪華すぎる布陣はもちろん、石岡瑛子による独創的なデザインセンスや、アナログ技術の粋をあつめた特殊撮影・視覚効果の数々に驚嘆しまくりです。
とくに特撮は、マットペイントに強制遠近法、逆再生や『ノスフェラトゥ』インスパイアの影シーンまで、目から鱗なテクニックがいっぱいでとっても楽しい!
(さすがに演出としての古臭さは否めないけど……)

そして本作で原作以上に引き上げられているのは、“性愛”的なテーマ性。セックスを象徴するものとして、退廃的ながら魅力的な存在として吸血鬼像を塗り替えています。
もちろんそれは三角関係とか求婚合戦とかのドラマや、貞淑なミナ・お転婆なルーシー・淫靡な女吸血鬼たちのキャラクターに仮託される女性性のモチーフにも象徴されています。「性病(Venereal disease)」というヘルシング教授のセリフが印象深いですね。
……いっぽう、男性陣がみんなキャラ立っていながら没個性的なのは残念。婚約争いしてたのに妬みや怒りをお首にも出さなかったり、連日連夜の吸血乱交をこの世の地獄と報告されたり、「……いやウソつけぇ!」ってなるでしょ。
青年たちが道徳の教科書のように“清廉潔白”な存在であったり女性陣が“ファム・ファタール”的役割だったりするのは、原作執筆当時の時代感によるしょうがないものですかね。

まぁ吸血鬼というものは、そんな社会性や倫理観をぶち壊す圧倒的な存在であるのが魅力です。
だってぜったいバンパイアのほうが楽しいじゃん。
本作ではゲイリー・オールドマンのセクシーさが、そんな“吸血鬼幻想”を加速させます。ハットとサングラスの隙間から視線をおくる若伯爵かっこよすぎ。前髪を剃ってても最高です。
……てか途中モニカ・ベルッチいなかった!?