針

ファンタジアの針のレビュー・感想・評価

ファンタジア(1940年製作の映画)
4.1
昔のディズニーアニメ視聴の一環。
魔法使いの弟子のミッキーが水をジャブジャブやるぐらいのイメージで観たらぶったまげました。こんなにアヴァンギャルドな「芸術」志向のアニメだったとは……。

クラシックの名曲群のイメージを元に作られた短編アニメ8本を集めたオムニバス作品。初めに実写でオーケストラ&曲の解説者が登場し、彼の説明のあとで演奏が行われ、それをバックにディズニー製作のアニメーションが映し出されるという流れを繰り返して全体が進行していきます。

使われているのは、
①J.S.バッハ「トッカータとフーガ ニ短調」
②チャイコフスキー 組曲「くるみ割り人形」
③デュカス「魔法使いの弟子」
④ストラヴィンスキー「春の祭典」
⑤ベートーヴェン「田園交響曲」
⑥ポンキエッリ「時の踊り」
⑦ムソルングスキー「禿山の一夜」
⑧シューベルト「アヴェ・マリア」
の8曲で、適宜短縮されて取り入れられています。
自分の受けた感じだと音楽とアニメーションに明確な優劣の関係はなくて、両者は互いにBGM的でもありMV的でもあるって感じがしました。

しかし8本のアニメは種類がほんとにバラバラで、それも含めて何とも野心的な作品だと思う。楽しいディズニーアニメ的なのはミッキーが出てくる③と、駝鳥やカバが優雅に踊る⑥。ギリシャ神話の世界が展開される⑤はタッチが違うけど比較的とっつきやすい。でもその他がすごくて、①は曲のイメージを具象化せずに抽象的なまま映像化したみたいなアニメで初っ端からこれなの! と驚きました。それと比べると②は遥かにファンタジックだけど相変わらずストーリー性はほぼない。ここまでで30分かかるのでたぶん子どもは寝てると思う💤 ④は地球上の生物の誕生から恐竜の絶滅までを映像化した作品で、地球誕生から爬虫類が陸に上がるまでのパートは抽象寄り、恐竜時代は普通のアニメ寄りっていう折衷作という印象。でもって⑦で悪魔の宴をやって、⑧で神への祈りをアニメ化してます。商業作品として全体を観ると、誰に向けて作られたアニメなのかちょっと測り難くて、いやぁすごかったです。

絶え間なく音楽が流れているのでセリフは合間の説明パートにしかなく、音楽と調和した映像の躍動感を眺めるって感じの作品。基本的にストーリーを楽しむ映画ではないのですが、こういうアニメを初めて観たので謎の感動がありました。最後の「禿山の一夜」→「アヴェ・マリア」の部分はさすがに見入ってしまったし。

仮に似たアイデアの映画があってもここまでの強度と混沌には達してないと思うので、一見の価値ありだと思います。自分的には好き、というよりとにかく凄いという印象が強かった……。
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