エクストリームマン

パーフェクトブルーのエクストリームマンのレビュー・感想・評価

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
5.0
今敏で一番好きな作品。“アイドル映画”としても、アニメ映画としても、屈指の出来。アニメーションでしかできない表現を極めている。

この映画は1998年公開だが、「眼差しと眼差される」ものとしてのアイドルという異形性は普遍的なテーマだと思う。我々は誰もが他者や世界をある種のイメージを通して見ている。そのイメージの差異は言語によって常に補正されているが、“同じ”ものを見ていないのではないか、という疑いがふとした瞬間に湧くことがあるだろう。その疑いは、「個人」という概念に回収されて往々にして霧散してしまうし、そうすることで可能になっているコミュニケーションの恩恵は決して小さいものではない。しかし、見ているイメージが決定的に異なることが露呈してしまった瞬間、それまで確かだったもの全てが融解し始めるだろう。そういう、日常的に行われているイメージの操作を、機構として取り込んで増幅させるアイドルというシステムの歪さがよく描かれている。

アイドルとしての未麻、というイメージを皆が見ているが、見る者によって微妙にズレている、というところが非常に面白い。誰もが肥大化させた理想を生身の人間に押し付けている。また、霧越未麻本人が自身に被せられたイメージに惑う様は、迷宮に迷い込んだかのような不安感を醸し出していた。

ダークでシャープな傑作!