エクストリームマン

透明人間のエクストリームマンのレビュー・感想・評価

透明人間(1954年製作の映画)
4.5
“透明人間”映画の最高傑作だと思う。

軍の実験で「透明」にされた男たちの行く末。社会の中で「透明」に生きるとはどういうことか、ということと、南條(河津清三郎)が正体を隠す方法が1つの設定の中に含まれていて機能的で美しい。生きる目的や希望は大義の中ではなく身近なところにある、というベタな物語が、「透明人間」というSF的設定によって改めて切実なものとして語り直されるのだ。『ガス人間第一号』にも通じるような、怪人と社会の関係についてのアラン・ムーア的な考察がリアリティと悲哀を生み、更にそれを70分で語りきってしまう手際の良さにも感服する。戦争を根底から変えてしまえる筈だった技術を植え付けられた者たちは、しかし戦争が終われば行き場もなく、文字通り「消された」まま彷徨うことになった。帰還兵が俄然リアルだった1954に(『ゴジラ』と同じ年だ)作られたこの映画は、社会的に「透明」にされた彼らについて比較的ストレートに描いているが、時代を経た今にも通じる普遍性を備えている。