YasujiOshiba

PUSH 光と闇の能力者のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

PUSH 光と闇の能力者(2009年製作の映画)
-
思いがけず面白かった。

冒頭の廊下の映像から引き込まれる。消失点を真ん中に置いたパースペクティブの移動撮影。それだけで、おやと思ってしまう。

そしてメインの舞台である香港へ。なぜか香港の映画は楽しめちゃう。オリエンタルでノワール、そしてなぜかノスタルジックだからかな。そこに2匹の犬のようなスニッファー(匂いをたどる能力者犬)がやってくるときの、ミュージッククリップのような映像、音楽、そして編集のノリがよい。

クリス・エヴァンスは、ぜんぜん強くない能力者ぶりがよい。ボコボコにされるのだけど、なんとか切り抜けるところに無理がないのは、能力者をパズルのように組み合わせた脚本がよいってことか。それからダコタ・ファニングは『宇宙戦争』のころからはグッと大人になってかっこいいのだけれど、自分の未来に追いかけられる恐怖の表情は、あいかわらずフォトジェニックなのがよい。

ともかく出てくる俳優さんが、みんな味があるんだよね。カミーラ・ベルの三白眼でちょいと不吉な美人ぶり。ジャイモン・フンスーのスタイリッシュでいけすかない悪ぶり。ワイパー(記憶をワイプアウトさせる能力者)ボートのおっちゃんとか、ワッチャー(未来が見えちゃう能力者)の中国美人さんとか、ブリーダー(音波で相手の血管を破壊して出血死させちゃう能力者)が叫ぶときの李小龍ばりの表情とか、盛りだくさんぶりがよい。

なによりもよいのは、キャラにマスクをかぶせたり、CGでゴテゴテに飾ったりすることなく、個性的な俳優たちの個性的な肉体と表情を使っているところ。映画はやっぱり人間をみたいじゃないですか。

そしてラストシーン、暗転してからの音で見せる映像もわるくない。

おすすめです。
YasujiOshiba

YasujiOshiba