かなり辛かった。ハッピーエンドでなにより。
過食症かつ引きこもりの母親の機嫌を取りながら、自閉症の弟を付きっきりで世話もする。寂しい人妻の不倫相手にもなり、町の小さな食料品店で家族を養うために働く。
ギルバートはとにかく家族や周りの人のために動き、自分自身でいられる時間がない。
尋常じゃないプレッシャーやストレスの中で、よく誰も恨まずにいられるなと思った。将来への希望もなく、自分の望みなど考えつくことすらない。最悪の場合母や弟に手をかけるような展開も考えられるぐらい厳しい環境にも関わらず、家族愛に満ちていて素敵な青年だと思った。
同時に、全員を見捨てないギルバートの善性が話をより難しくしているとも感じた。ギルバートはカッとなって弟を殴ってしまうし母のことを鯨と蔑むかも知れないけど、結局自分を責めるし相手を愛してる。誰も悪くない、「仕方のない状況」。
こんな、「悪者」がいない物語はよりリアルで、より結末が難しい。悪を倒せば平和が訪れる勧善懲悪とは違って解決の糸口が見出せない。
そう考えた上で観ると母の急死は一つの解答だったと思う。結果としてギルバートは家を燃やすことにして、ようやく両親の呪縛から逃れることになる。悲惨なギルバートの世界で、本当の安らぎが訪れた瞬間だと思った。
途中、ベッキーの語るカマキリの話が残酷だと思った。交尾が終わるとメスはオスを食い殺す。こういうストレートに現実を突き刺してくる寓喩はとても好み。
あと若かりしディカプリオの演技が凄かった。ディカプリオ感が全くないって意味で一番かも。
