一粒万倍日

山の郵便配達の一粒万倍日のレビュー・感想・評価

山の郵便配達(1999年製作の映画)
3.8
今から約40年前の1980年代初期の、湖南省西部の山岳地域にあるいくつもの集落に、2泊3日をかけて郵便物などを背負い山道を歩き配達する郵便配達人の責任感ある真面目な仕事ぶりと、その過酷な仕事を受け継ぐ息子の物語。

原題が「那山、那人、那狗」で、直訳すると「あの山、あの人、あの犬」らしい。
そう、映画に登場するのは中国の自然豊かな山岳地帯と、配達人の親子とその飼い犬の次男坊。

広大な中国の自然と共に、引退する父から息子へと仕事を引き継ぐ2泊3日の旅。

山岳地帯の村の人々にとって情報配達の役割だけでない配達人の存在など、話はゆっくり進んでいく。

国家公務員であり社会的地位も約束されている仕事ではあるが、その仕事は過酷で、家を留守にしなければならないがために親子関係も希薄になり、息子は「父さん」と呼ばなくなっていた。

それでも息子が父の仕事を受け継いでくれることに。
父が長年築いてきたいくつもの集落との信頼関係によって、息子もまた立派な配達人になっていくことだろう。

仕事の真髄をを教える2泊3日の旅を通して、息子が「父さん」と呼んでくれるようになった。

子育て期間の長い空白を埋める旅となった父は、やっと心の平安を取り戻せたようだった。それは母も同じだろう。

今は交通網が整ってきてはいると思うが、それでもあの山岳地帯へは歩い届けているのではないかと。郵便だけでなく宅配なども。

配達人の仕事はほんとうに大事な仕事だと改めて感じた。