改名した三島こねこ

レイジング・ブルの改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

レイジング・ブル(1980年製作の映画)
3.6
暴力でしか生きられない男がいる

実在のボクサー ジェイク・ラモッタの自伝から製作された背中に鈍痛を覚える作品。スコセッシ監督作品らしいリアリティのある暴力表現も見所だが、なによりロバート・デ・ニーロの圧巻の身体作りと、常に理不尽な激情を抱えているラモッタの演技こそが注目に値するだろう。

ハッキリ言って(実在の人物にこういう評価をするのは心苦しいが)ラモッタの人間性はロクデナシとしか言えない。疑心暗鬼と暴力性が彼の人格を支えているのだからどうしようもないのだが、その破滅に向かう最悪な性根がリングでの彼の魅力に連結されているのだから、なんとも皮肉。
そしてその最悪な特性がスコセッシの作風に見事にマッチングしているものだから、もう見事なまでに過激で苛烈で劣悪で、"Raging Bull"というタイトル以外に適当な題が思い浮かばない。

リングでのあの舌を巻くまでの暴力描写はモノクロだからこそだろう。あの血糊のドス黒さなんて最高。舞台裏での事情からモノクロフィルムになったらしいが、災い転じて福となされた好例というべきだろう。