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嫌われ松子の一生のNowLoadingのレビュー・感想・評価

嫌われ松子の一生(2006年製作の映画)
4.3
 本日の一本。

 川尻松子。男運0はおろかマイナス、ツキも0に満たないマイナス。そして不幸を呼び寄せるド級メンヘラ。父に、小説家に、行きずりの男に、かつての生徒に。終いに愛情を受けずに愛に飢える。そして愛を失って非業の最期を遂げる53年の人生。この人生を「永遠の0」同様その死を知った見知らぬ家族によりその生き様を描く。

 人一倍愛を渇望していたからこそのメンヘラなものの、中谷美紀なんだからそりゃそうだよなと納得する他ない顔は美人で体も抱き心地最高、ということで男(ここで天性の男運が発揮される)を寄せ付ける。彼女の一生は男に人生を狂わされ全てを失い代わりの男を見つけて愛して狂わされる、その繰り返し。

 しかし松子は男を真っ直ぐ見ているときは誰よりも幸せそうにその相手に精一杯の無償の愛を捧げる。ある時は獄中で理容師の資格を取り、またある時は獄中の彼氏をいつまでも待ち続ける。彼女が男を愛していることに間違いはないのだが、其の実色恋にドップリとハマっている自分が好きだったのだろう。

 ラスト15分で彼女はその愛を棄てる。転落一直線。殺人前科持ちのヤベー女しかそこに残っていなかった。但し、松子には女には好かれた。それが妹であり、沢村なんだろう。彼女達は最後まで松子を見捨てなかった。ここも彼女のツキのなさが伺いしれる。

 「パコと魔法の絵本」の際にはキツかったCGも今回は非常に使い方が良かった。松子の回想録だからグラフィックがぼんやりしていても(でも百貨店のCGなどコダワリはありそう)むしろ味のある絵面である。なにより中島組率いるの現在でも名うてのキャスト陣が若っか!となりつつその演技力を余すことなく眼前で繰り広げる。あとスプラッタ描写も強烈で痛々しいのも美しい。

 中島哲也の最高傑作は「告白」であることは断じて疑わないが本作は要所要所でかの作品のピークを上回る瞬間最大風速がある。記録より記憶に残る一本。

 個人の視点から見れば悲劇だが、観客の視点から見れば喜劇という「JOKER」アーサーフレックの言葉を思い出した。自分自身のメンタルの弱々しさに「なんで生きているんだろうか」と思う日々。そんな私に生きる指針をくれるような2時間であった。ゴミみたいな人生を駆け抜けた松子の生き様に私は確かに感情移入し、涙していたことを忘れない。
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