NowLoading

バービーのNowLoadingのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
3.5
 本日の一本。開始のっけから「2001年宇宙の旅」パロでもう本作は子供向け映画ではなくなった。

 このバービーって単語は「BABYLON」のフランクな読み方なんですか?って現代版バビロンかって位の。バービーランドで理想の女性社会を謳歌するバービー。しかし彼女は突如現実世界の「リアルワールド」の干渉により体が不自由になってしまった。そこでその原因を取り除くべく自分の世界を飛び出し現実の荒波にダイブする。

 前回観た映画が「バビロン」なものでどうしてもあの作品を彷彿するような面白さがあったりなかったり。だってマーゴット・ロビーとライアン・ゴズリングが出るんやもんしゃーないでしょう?あっちが1920年代の糞尿煮詰まる映画なら本作は百年後の2020年代が生み出したキワモノである。女性が優位に建つ世界は対等ではない。男尊女卑ではなく女尊男卑の世界。バービーが世界を回して付け合せのオマケであるケンはその立ち位置に不満ではないが奥底のプライドがベッコリと凹んでいる。

 ところが彼女らがリアルワールドに来ると彼の地とは真逆の男尊女卑の世界。バービーの販売を担うマテル社は偉い人は全部男と世界を回しているのは男であったのだ。この世界こそが正しい世界だと確信したケンは空想世界に戻って正しい世界を確立しようとする。バービーはバービーで古い価値観の元生まれた白人パツキンネーチャンなので現代的な女の子からは敬遠される。

 この実に面倒なコントラストこそが本作のキモだ。白黒でサイレントな時代は良かった。目に映る物が全てだったのに。しかしこの世はそうはいかないのだ。相手の気持ち(ネガティブ感情)を肯定しながら自分の想いにも正直に生きなければならない。スクリーンの奥の大人の事情を考慮せねばならなくなるのだ。ネリー・ラロイが成せなかったことをバービーは求められる。

 バーベンハイマーをきっかけに観るはずもなかった本作を観賞することにはなったが、結果としてこういう思う所が多い考えさせる作品をまた一つ発見できた。あまり褒められたネットミームではないが今回はそんな劇薬から本作を発掘できたことは疑いようがない事実であった。
NowLoading

NowLoading