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テシス 次に私が殺されるの一人旅のレビュー・感想・評価

テシス 次に私が殺される(1996年製作の映画)
5.0
アレハンドロ・アメナーバル監督作。

暴力映像を研究する女学生・アンヘラが、大学で女が実際に殺害されるスナッフ・フィルムを入手したことで体験する恐怖を描いたサイコホラー。
『オープン・ユア・アイズ』や『アザーズ』を撮った奇才アレハンドロ・アメナーバル監督の初期作品。
安全なはずの大学に女学生ばかりを狙った猟奇殺人犯が潜んでいるという設定自体恐ろしいのに、それに加えて鑑賞者の恐怖心を極限まで煽る演出が大変素晴らしい。大学に隠された秘密通路をマッチの火だけを頼りに恐る恐る進んでいく場面や、殺人者と思しき男に全力で追われる場面、アンヘラが目撃する恐怖の幻覚などなど....一つ一つの場面が心底恐ろしい。また、スナッフ・フィルムの凄惨さを真っ暗な映像と被害者の絶叫の合わせ技で捉えた演出はもはや天才的で、アメナーバル監督の類い稀な演出センスを確信させる。私は本当に怖い思いを味わうと無意識の内に爪を噛む癖があるのだが、本作でも気が付けば爪を噛んでいた。洋画のホラーで爪を噛んだのは久しぶり。それだけ、この映画には本当の恐怖が潜んでいる。
また、二転三転する脚本もミステリアスで飽きさせない。犯人らしき人物を複数登場させ、“コイツが犯人なんじゃないか!?”と思わせる意味深な演出をいくつも用意する。その甲斐あってアンヘラのみならず鑑賞者の心も何度もミスリードされ、次第に疑心暗鬼になっていくのだ。
そして、『ミツバチのささやき』のアナ・トレントが信頼と恐怖の狭間で葛藤する主人公アンヘラを好演。本作製作当時30歳で、『ミツバチ~』の頃の天使のような無垢な可愛らしさは残念ながら失われている。全体的に輪郭がゴツゴツしてしまっているし、『ミツバチ~』の頃のアナのイメージを持ったまま大人になった彼女を見ると恐らくぷちショックを受けると思う。それでも、見る者を惹き込ませるような大きく印象的な目は大人になっても健在だし、何より演技力は確かなものなので、ミツバチのアナに負けず劣らず存在感のある演技を見せている。
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