マヒロ

武士道残酷物語のマヒロのレビュー・感想・評価

武士道残酷物語(1963年製作の映画)
3.5
建設会社の社員である飯倉(中村錦之助)は、ライバル会社の秘書かつ自身の婚約者である杏子が自殺未遂で運び込まれたと聞き、慌てて病院に駆けつける。彼女の行動は会社同士のしがらみに巻き込まれてしまったことによるものであり、飯倉は自分の先祖たちが同じように苦境に立たされた歴史が描かれた日誌の内容を思い出す……というお話。

「武士道」とついたタイトルなのにいきなり現代から始まるので驚いたが、昭和のサラリーマンである飯倉の視点から、彼の先祖が武士道精神に基づき「主君のために死ね」と言わんばかりにお上に忠義を尽くした結果辿った悲劇の歴史を思い返していくような形になっている。
7代にも亘る飯倉家の先祖たちは全て中村錦之介が演じているが、時代により様々な立ち位置におり、性格も見た目も全く違う人物を演じ分けているのが素直に凄い。

最も印象深いのは、メインビジュアルにもなっている天明の武士・飯倉修蔵のエピソードで、残酷物語というタイトルに相応しい、世にも悍ましい出来事が巻き起こり、胸糞悪い気分にさせてくれる。
これ以外にも基本的にろくでもないことばかり起き、それらが全て自分より上の立場の人間の都合によるものでしかないというあたり暗澹たる気分になる。それらを顧みた現代(昭和)にて、ようやく封建社会的なものから脱却しようという希望の光が見えてくるが、昭和の時代においても武士道精神という名の被虐精神が息づいているというのが何とも皮肉だし、結局今の時代も「社畜」なんて言葉があるように対して状況は変わっていないのではないか……という気もする。



(2021.251)
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