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カティンの森のクリームのレビュー・感想・評価

カティンの森(2007年製作の映画)
4.0
第二次世界大戦中、1万数千人のポーランド軍将校が虐殺された「カティンの森事件」をベースに作られた映画で、監督自身もこの事件で父を亡くしています。事件を知らなかったので、まず知る事が出来て良かったです。ドイツとソ連両方に攻められたなんて、想像したら吐きそうな位の恐怖でした。それが冒頭の橋の上のシーンで表現されていて、それが秀逸です。史実として沢山の人が知るべき貴重な映画だと思います。
1939年、ポーランドはドイツ軍とソ連軍に侵攻され、すべてのポーランド軍将校はソ連の捕虜となった。アンジェイ大尉は、彼の行方を探していた妻アンナと娘の目前で、東部へ連行されて行った。アンナは夫の両親のもとに戻るが、義父はドイツに逮捕され収容所で病死し、残された家族はアンジェイの帰還を待ち続けるのだった。



ネタバレ↓



まるでドキュメンタリーの様に淡々と進んで行くストーリー。
ポーランド国民は、 ドイツにもソ連にも正義や善意なんてない事を知っていた。だけど、生き延びる為にそれぞれが偽りの自分を演じたり、意思を貫いたり。 ドイツの広告塔を拒否した大将夫人。 生き延びてソ連の手先となった事を恥じ、自殺したイェジ中尉。 ソ連に反抗して轢き殺された青年。誰も救われなかった。アンジェイ大尉は、カティンの森に連れて行かれ殺された。彼の書いた手記だけが妻の手元に善意ある人の手で届けられた。
ラストの銃殺シーンはキツイ。森に連れて行かれ、人がゴミの様に捨てられている穴の前に立たされ、後ろから後頭部を撃ち抜かれ、そのままその穴に投げ入れられる。その後、穴が一杯になったら、土砂で埋められた。
戦後ポーランドは独立国家だが、長い事ソ連により主権を制限され、常に追随する行動を取る立場にあった(衛星国)。その為、この事件について語る事が出来なかった。 世界中もソ連の犯行だと解っていながら、口を閉ざした。1990年代にようやくゴルバチョフが「スターリンの犯罪」としてソ連の責任を認めたが、被疑者が死亡している事も含めてロシアに責任はないとし、国としての謝罪は行われていないという。
犠牲者の魂は、今も救われていない気がします。 長く黒い無音のエンドロールの意味するものは、暗闇の中葬られたままなのだと言っている気がしました。
相当メンタルに来ますが観賞して、知る事が出来て良かった。にしても極悪ナチスに罪を擦り付けるスターリン。恐怖で心がいっぱいになりました。
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