くりふ

ブギーナイツのくりふのレビュー・感想・評価

ブギーナイツ(1997年製作の映画)
4.0
【肉棒バカ一代】

少し前の『ラヴレース』からの流れで再見しました。

実在の大物(モノもね)ポルノ男優ジョン・ホームズを主人公ダーク・ディグラーのモデルとし、70年代怒涛に屹立…しかし80年代しゅるる萎えゆく米ポルノ映画界をゆったりと追う。おもしろうてやがてかなしき鵜舟かな。

人生これチンポ。チンポひとすじただそれだけ。ダークの人生はシンプルで一瞬羨ましくもなっちゃうけれど、所詮、1本の肉棒で得られるものには限りがある、というお話ですね。

芸は身を助けるが滅ぼしもする。…でも、わかっちゃいるけどやめられない。

面白いのは絶頂を迎えゆく70年代篇。80年代はダラダラと堕ちるばかりで正直、飽きてきます。単純に尺絞ってよかったんじゃないかと思った。この監督もまだ若かったんですね。

時代に揉まれる感覚と事件がカラフルに流れゆきますが、特に好きなのは、ミジメンやらせりゃ天下一ウィリアム・H・メイシーの夫婦クラッシュ。セックスが自己表現ともなった時代ですが、奥さん、そりゃヤリ過ぎでしょう!(爆笑)

他人に見せるセックスで商売している男が、家では逆に悩まされる皮肉。そしてこの夫婦で70年代をバン!と終わらせるセンスがめっちゃいいなーと思いました。後までみてゆくと、醜態を晒し続ける他のメンバーに比べたらよっぽど潔いですね。…錯覚だけどね。

役者さんはみな、存在感に隙がなくて見事だと思う。大好きなヘザー・グレアムの、ペライのに昏いアイドル感。何故ポルノで人気かわからぬジュリアン・ムーアの切実と母性。

…魅力は次々挙げたいですが今となっては、フィリップ・シーモア・ホフマンのキモカワ演技がいかに貴重だったことか…(泣)。

あと、ジョン・C・ライリーとアルフレッド・モリーナには、こんなに若くてスリムな時代があったのか!と驚愕しますね。

この映画、各人物への愛情には溢れているが、その生き様は少し冷ややかに見つめていますね。この温度差が魅力ですが、そこから語り上げるという力がまだ不足していたのか。

しかし面白いのはこの視線、他人のセックスを見つめ撮り続ける、バート・レイノルズ演じるポルノ監督の視線とどこか、似ているところです。

<2014.5.1 記>
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