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愛の記念にのKSatのレビュー・感想・評価

愛の記念に(1983年製作の映画)
3.6
乳白色の肌、純粋な瞳に大きな乳房を持つ、当時15歳のサンドリーヌ・ボネールの奔放な日常が、パーセル/クラウス・ノミの「Cold Song」に合わせて綴られる、といえば聞こえは良いが、要するに愛に飢えたメンヘラの噺。

権威を振りかざす父、ヒステリックで狂気一歩手前の母、マザコンの兄によって抑圧されたヒロインが節操なく男と寝るのは必然的ともいえる。結果的に父とのよく分からない親子愛に行き着く、よく分からない噺だ(父役はピアラ自らが演じている)。

むしろ、後の朝安を髣髴とさせる生々しい演技演出、ほとんど自然光だけの撮影、コンティニュイティを無視した、気の狂ったようなカットの繋ぎなどの異質さはプリミチヴですらあり、この監督の「孤高の映画作家」たる所以を感じる。所々、ピントが合っていなかったり、画面が明滅しているのは、意図的なものか、単なる技術ミスか。

特に、節操のないセックスが題材であるにもかかわらず、いわゆる「最中」ではなく「事後」ばかりを切り取る様は確信犯で、もはや倒錯的ですらある。

ラストのあの音は、飛行機の音なのか、バスの音なのか。

それにしても、原題「À nos amours(我らの愛に)」の「nos(我ら)」とは、一体誰のことなんだろう?よく分かりません。
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