ギルド

パリでかくれんぼのギルドのレビュー・感想・評価

パリでかくれんぼ(1995年製作の映画)
4.7
【忘却の真実という知育玩具で遊んでみた!】【ジャック・リベット傑作選2024】
■あらすじ
荷物に貼られる「こわれもの注意」、直接的には「高い・低い・傷つきやすい」の原題をもつ本作は、三人のヒロインが図書館へ、公園へ、クラブへ動きまわって、ある時はローラースケートで滑り、歌い、生き生きと舞うミュージカル!
パワフルな不良少女ニノン、五年間の昏睡状態から目覚めたルイーズ、「本当の母親」を探しているイダ。そして、彼女らを結びつけるひとりの男・・・・・・。
主演の女優たち三人も脚本執筆に参加した。
音楽も主役のひとりである本作には、クラブ歌手役でシャンソン歌手エンゾ・エンゾ、そして『修道女』以来20年ぶりのリヴェット映画への出演となる、ヌーヴェル・ヴァーグの女神アンナ・カリーナも特別出演。魅惑の存在感を放っている。

■みどころ
大傑作!!
最高に訳分からない展開だけど最高に楽しい映画だった!!

本作は自由奔放に好き勝手やるニノン、昏睡状態から目覚めて夢遊病者でもあるルイーズ、本当の母親を探しているアイデンティティが不安定なイダの3人に焦点を当てた群像劇である。
映画は本当に予想しない展開に向かっていく。映画の進行そのものが非線形であり、まるでミュージカル映画のような質感すらある。
けれども、良い意味で自由奔放で華がある映画で面白かったです!

一番ぶっ飛んでるのは
ニノンがルイーズに昏睡状態の事、父が取った行動を伝える

ルイーズにバラを贈るも捨てるくらいニノンにバチクソキレ散らかす

ニノンはレモンの話を何故かする

ニノンとルイーズ、一緒にミュージカルを行い仲良くなる←?!?!w

…これはあくまで一例ではあるが、そのくらいストーリー進行で思わぬタイミングで非現実な出来事に遭遇するのが観てて面白かったです。
ギャルと地味子の意気投合というTwitterの美少女ピクチャーリツイートでありそうな展開をする無邪気さとか、ラ・ラ・ランドみたいなミュージカルを華麗に決めてるのは良いけどタイミングと場所のミスリード具合が逆に面白くて…もう最高です。

また本作は主に夢遊病のルイーズに焦点を当てた群像劇ではあるが、群像劇の結び方も興味深い。
ヌーヴェルヴァーグの実験要素でもあるが、実験要素という奇を衒うものに留まらず『真実を伝える』事が必ずしも当事者に幸福を与えるとは限らない的な話と見事に繋げている。その主題、主題の伝え方が素晴らしかったです!

忘却の真実に対する距離感が変化すること、真実がアイデンティティを理解する救いでもあると同時にアイデンティティを固着する錨のような存在であること…といった哲学的要素を映画の展開、物語の構造を通じて語って「忘却の真実に対して私はこういった距離感で人生を歩みます」…な着地を魅せる。
映画の面白さ・華だけでなく、主題への着地が綺麗に決まってて凄すぎるだろこれ。

音に思い出が宿る話はセリーヌ・シアマ『燃ゆる女の肖像』でいうヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲第2番ト短調「四季 夏」RV315の扱いを彷彿させるし、ルイーズの真実を知った友人ニノンの宮崎駿『ルパン三世 カリオストロの城』的なアプローチを思わせる。
それらの異なるムーブメントを華やかにかつスタイリッシュにまとめて『忘却の真実』の距離感と幸福論に落とし込む姿に圧倒される大傑作でした!

同日に観た『彼女たちの舞台』と実は扱ってるテーマは似てると思うが、あからさまに現実と虚構の入り乱れを狙った彼女たち〜 と違ってニュートラルに現実を掻き乱すマジカルさを演出してるのが好き。
潔いくらい映画で遊びながらも、映画の落とし穴に対して見事な着地を明示するスタイリッシュさは感動もの!
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