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マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間のギルドのレビュー・感想・評価

4.2
【惨劇の真実は目の当たりにした当事者しか分からないし伝えられない】
■あらすじ
2022年2月、ロシアがウクライナ東部に位置するマリウポリへの侵攻を開始。
これを察知したAP通信のウクライナ人記者であるミスティスラフ・チェルノフは、仲間とともに現地に向かった。

ロシア軍の容赦のない攻撃による断水、食料供給、通信遮断…瞬く間にマリウポリは包囲されていく。
海外メディアが次々と脱出していく中、彼らはロシア軍に包囲された市内に残り、死にゆく子供たちや遺体の山、産院への爆撃など、侵攻するロシアによる残虐行為を命がけで記録し、世界に発信し続けた。
徐々に追い詰められていく中、取材班はウクライナ軍の援護によって、市内から脱出することとなる。
滅びゆくマリウポリと戦争の惨状を全世界に伝えるため、チェルノフたちは辛い気持ちを抱きながらも、市民を後に残し、脱出を試みた...。

■みどころ
2022年にロシアがマリウポリへ侵攻した当時をドキュメントした映画。
AP通信のミスティスラフ・チェルノフの撮影およびモノローグを中心にマリウポリで戦争に苦しむ人々、徐々に崩れて死んでいくマリウポリを映していく。

その途中には目を背きたくなるような残酷な映像や生々しい映像も多くあり、あまりにも残酷故にメディア・SNSでクライシスアクターが演じたフェイクニュースと言われる始末である。
報道と実態の乖離、想像出来ない結末を現実と受入れ難い姿…色々な姿が見えて考えさせられる1本であると同時に撮られて世に出される事が奇跡すら感じる一本でした。

この映画はドキュメンタリー映画で時系列にマリウポリの様子が撮られていくが、印象的な映像が数多く存在する。
ノンフィクションでありながらも、撮られる画角が映画的でそれも相まって「映される出来事がフェイクと誤認される」「けれども映された出来事は目の当たりにした当事者にしか分からない」を同時に体現していて凄かった。
印象的なのは担架に乗せられた心肺停止の子供だろうか…ここの何も悪くないのにロシアの正義と身勝手な論理による被害者として強調されていて観ているのがとても辛かった。

全編通じてあまりにも信じられない映像に度肝を抜かれ、歴史と正義によって殺される生々しさ・正義の茶番によって現地の人間をも狂わせる姿はやるせない、そんな映画でした。
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