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バットマン リターンズのmimagordonのレビュー・感想・評価

バットマン リターンズ(1992年製作の映画)
5.0
文句無しの大傑作だ。しかも時代を先取りしているようにも見える。

前作よりティム・バートン色が前面に出ていて、ポップでグロテスクな世界観はコミカルだがゴシック・ホラーを思わせるダークさも増している。そして何より登場人物の多面性と複雑な感情をエンタテインメントの中にしっかり落とし込んでいる。セリーナがキャット・ウーマンになる背景、セリーナとブルースという二つの顔をもち続ける者の苦悩。悪役のペンギンも冷血非情だがその中には孤独さがある。そしてそんな彼の承認欲求と復讐欲を自分の利益のために利用する街の権力者マックス。本作で一番自業自得なキャラだが、一人息子の父という側面もある。それらが全てプロットの中で正確に機能し、序盤はボンド映画を思わせるような黒幕探り、ダークユーモア溢れる中盤、そしてスリルとスペクタクルの待つクライマックスへと向かっていく完璧な流れ。そんな冒険活劇の中に性差別やルッキズムに対するティム・バートンの「NO」がはっきりと刻まれる。

ヒーロー映画も、正義や平等も、おとぎ話のようにはいかないかもしれない。でも、灯りは照らしておこう。いつでも立ち上がれるように。涙無しには観られなかった。今後もまた観る度に涙するんだろうな。
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