ユースケ

ゴジラ対ヘドラのユースケのネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ対ヘドラ(1971年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

オープニングのヘドロの海に浮かぶマネキンをはじめ、ヘドラの撒き散らす硫酸ミストによって皮膚が焼けただれて白骨化す人々、ヘドロで生き埋めにされる雀荘のおっさん、校庭でバタバタ倒れる運動中の女子生徒、建設中のビルから落とされて白骨化する作業員のおっさん、ヘドロに生き埋めにされて泣き叫ぶ赤ちゃん、光化学スモッグに沈む工場地帯、枯れる花、死ぬ熱帯魚など、悪夢のようなシーンの数々。
第6回【東宝チャンピョン祭り】で公開された【ゴジラ】シリーズ第11弾(昭和ゴジラシリーズ第11弾)は、核実験と公害という人間の業によって誕生したゴジラとヘドラの戦いを通して公開当時に社会問題となっていた公害問題をサイケデリックに描いたトラウマ映画。

とにかく、美術監督の井上泰幸がデザインし、造形チーフの安丸信行が造形し、特技監督の中野昭慶と監督の坂野義光がまとめ上げたヘドラのビジュアルが秀逸。
水中形態→上陸形態→飛行形態と変化するヘドラが【シン・ゴジラ】のゴジラに影響を与えた事は間違いないと思います。
工場の煙突から出る煙を吸ってご満悦なヘドラと【ウルトラセブン】のクレイジーゴンを思わせる車を飲み込むヘドラがたまりません。

アニメーション、ポエム、インタビューなど、手を替え品を替え表現される公害問題へのメッセージは素晴らしかったのですが、レイチェル・カーソンの【沈黙の春】にインスパイアされた主題歌の麻里圭子withハニーナイツ&ムーンドロップスによる【かえせ!太陽を】は流し過ぎだし、眞鍋理一郎によるゴジラのテーマはマヌケだし、子供の演技は大根だし、柴俊夫はサラッと死ぬし、なによりも、みどころであるはずのゴジラとヘドラによる怪獣プロレスの間延びっぷりはいただけません。いくら予算がないからと言ってもゴジラにおいでおいで=挑発行為を繰り返させて尺を稼ぐのはやめて欲しかったです。

100人しか集まらなかった100万人ゴーゴー大会に参加し、ヘドラに虐殺される若者たちはカウンターカルチャー=ヒッピーカルチャーの敗北を表現しているとか、若者たちを恨めしそうに見つめる老人たちはカウンターカルチャー=ヒッピーカルチャーを理解できなかった大人たちを表現しているとか、わかりづらいメッセージもあり。
ついでに言っておくと、ゴジラがヘドラの体内から取り出す二つの白い玉はヘドラの核である宇宙から飛来した鉱物ヘドリウムなので、ヘドラの目玉と勘違いしないようにしましょう。

ちなみに、ゴジラを放射熱線で飛行させた監督の板野義光はプロデューサーの田中友好にぶち切れられて二度と監督をやらせてもらえなかったそうです。シェーと若大将のモノマネがOKで飛行がNGって基準がよくわかりません。

麻里圭子