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シンドラーのリストのnewのレビュー・感想・評価

シンドラーのリスト(1993年製作の映画)
5.0
ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の際に多くのユダヤ人を救ったドイツ人商人シンドラーの話。実話。

「戦場のピアニスト」を観賞して以来、ホロコーストの実態に胸を締め付けられ気になっていた作品ではあるのだが、3時間を越える作品ということで若干敬遠していた。しかし時間があったので重い腰をあげて見てみると、3時間という時間を忘れてしまうほどの重厚な内容に思わず見いってしまいました。
その要因はホロコーストの凄惨さを綿密に描きだしている圧倒的リアリティー。狭いなかで多くの人物が密集しているユダヤ人収容所が描かれるシーンが多いのだが、そこの一画面に写し出される多くの人々の細部までこだわりぬかれて表現された表情や仕草、行動。そしてこれらをほぼ全篇を通して白黒で写し出す。これによって見るものにホロコーストのリアルをひしひしと感じさせている。

シンドラーという人間は、始めから英雄であったわけではないという事実にもリアリティを感じさせられた。
彼は商人として、ユダヤ人を利用して金儲けをしようとしていただけで、至って普通のドイツ人と何ら代わりはないのだろう。ただ彼には作中で彼が言っていた"力"があっただけ。多くのドイツ人は、ユダヤ人に対して哀れみ悲しみを抱いていたに違いない。虐殺を楽しむ人間なんてのは恐らく極一部。しかし、それでもユダヤ人を助けようと行動する物は本当に少なかった。
それは自己顕示や自己保身を優先される人間にはこの"力"は備わっておらず、殆どの人間が多分そうだから…。かくいう自分もシンドラーと同じ立場であってもユダヤ人を助ける行為にでれたかどうか怪しいと思う。だからこそ彼は英雄として相応しい人物であるのだろう。

この作品は全篇"ほぼ"白黒であると述べたがその例外の1つである赤い服の少女。彼女が何者であるかは作中では明確にはされておらず様々な考察がされているらしいですが、個人的な意見としては彼女は、ユダヤ人の列の波をナチ兵にも止められず逆流していく様子を見るとシンドラーの作り出した幻想で、シンドラーのユダヤ人への心境だったのではないかと考えました。この少女が隠れていく様子から、この時シンドラーはユダヤ人のことを気にとめつつも、勝手に隠れて逃げきれる者もいると、、ユダヤ人の死をどこか遠くの出来事の様に感じていたのではないか、そして後半の赤い服の子が下井となり焼却されるシーンではシンドラーにとって、ユダヤ人の死はてに届くほど身近な物になっていたということだったのではないかと感じました。
「こんな時代だから金よりも物資の方が役に立つ」といっていた彼が、物資を使いユダヤの女性を助け出したり、「この車を売っていれば、あと10人は助け出せた」と泣き叫ぶシーンから最終的な彼のユダヤ人への思いは本当に真摯なものなんだと感じられ心をうたれました。
シンドラーのユダヤ人のリストはおよそ1100人にも及び、作中でも"生命のリスト"だと言われていた。彼はこれだけの人数を救っておきながらまだ救える命があったのではないかと嘆いたのである。しかしこれが"生命のリスト"であるのならば、ここに連なる名前はこれだけではないだろう。最後に語られた様にシンドラーのユダヤ人の子孫は6000にもおよぶと。この映画が作られた当所がそうならば、現在はその人数はもっと莫大に増えているだろうしこれからも増え続けるだろう。この人々もまたシンドラーのリストの人々なのだと思う。そしてこれは本当に偉大な事であると思います。

見る価値のある映画というのは多いけれど、見るべき映画は意外に少ないと思う。しかしこの映画は間違いなくその"見るべき映画のリスト"に名を連ねる作品であると感じました。
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