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陸軍中野学校のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

陸軍中野学校(1966年製作の映画)
3.9
                 洗脳

「沖縄スパイ戦史」を観始めたら、「陸軍中野学校」が絡んでいるので急遽こちらを先に観ました。でも期待していたのとちょっと違って市川雷蔵さまと小川真由美の悲恋でした。頭切り替えてサスペンスロマンスとして楽しむことにしました。

戦争映画として観ると、諜報部員がふつうの人生送れないのは、戦時下は皆そうだったのと、なんとなく美化されているのに少々抵抗あり、悲恋だけでは反戦映画とは感じられませんでした。悲恋もスパイvs.スパイは作り込みすぎで、メロドラマっぽく感じました。

ただ、一期生は志願ではなく、半分騙されて拉致監禁に近い状況と、校長(加東大介)の熱意にほだされてしまった、軟禁状態における洗脳があったのだと思います。

エリートだけに人を信じやすく、夢みたいな大きな目標掲げられるともともと達成動機が強いから邁進してしまう。そんな彼らの特性をうまく利用して育成していました。一般的に教育は洗脳と紙一重ですから、諜報エリートを育成するには、相当に洗脳の手法が使われていたと想像できます。

イギリス人が市川雷蔵の婚約者(小川真由美)に、
「日本の本当の敵は陸軍です」
と言い放ち、確かに!とも思ったんだけど、複雑なことを単純化させるテクニックもまた洗脳の一つ。

そう考えると、この映画は、スパイの養成の方法だけでなく、洗脳のテクニックがあちこちに並走して埋め込まれているとも見ることができます。

優秀だと選ばれたと特別な人びとだと言い、
俗社会と隔離、
戸籍を消す、
不安を煽る、
キツイ課題でスクリーニング、
脱退可能であると初期に安心させ、続けるのは自分の意志だと暗示かける、
仲間を処刑させる(私刑)ことで秘密と恐怖を共有、
タブーなく自由に議論させることで自分の言葉として言語化、内面化し、
視点は内向きにさせるために、外部の考えを入れない(特に陸軍参謀を否定し指示系統を上官の加東大介に絞る)、
成功体験させる(イギリスのコード)、
目標は「世界平和」「勧善懲悪」
行動は「至誠」

考えてみると、 宗教と変わらない。
諜報部員の養成と戦争の大義は。
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