ENDO

或る夜ふたたびのENDOのレビュー・感想・評価

或る夜ふたたび(1956年製作の映画)
4.0
失業中に鬼怒川へ新婚旅行。出費が嵩めば心も狭くなる。あれこれ悩み嫉妬と無力感で愚痴りまくる佐野周二を糟糠の妻乙羽信子(しかも背後からハグして肩を乗せる仕草はやたらと官能的!)の甲斐甲斐しい包容力。野添ひとみは病身の恋人を御茶ノ水へと訪ねて夜の仕事で彼を献身的に支える強さを持つ。居酒屋で妻と離婚した元上司中村是好と再会。仕事を無くした男の紙屑同然の扱いに明日は我が身と壁にふと目をやるとそこにはオフュルス『歴史は女で作られる』のポスター。男のプライドが何の役にも立たない状態で拗ねていては事態は悪化するばかり。案の定悪阻の兆候にも気付かず蒸発して初めてその素性を知る。ミステリーの答えは深川の木場にいた育ての親は気狂い息子へ嫁がせるための算段。すぐ隣にいる女について何も知らない世界。メロドラマに中絶は付き物だが深刻にはならない。土左衛門のフェイントは『挽歌』をよぎらせる。何より管巻いてるわりに養老院の金を貯蓄してる千石規子の孤独に泣いた。口に放り込まれるあられ。髪結で直す鼻緒。牧歌的なスティールギターの音色がこの映画のトーンでもある。
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