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羊たちの沈黙のシネラーのレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
4.5
映画界の名シリアルキラー、
ハンニバル・レクター博士が鮮烈に
登場した本作を久しぶりに鑑賞。
幾度と見返している好きな作品であり、
レクター博士という狂気染みた
悪役に惹かれる不思議な映画だ。

FBI実習生クラリスが、
元精神科医の囚人ハンニバル・レクター
の助言を受けながら、
女性の皮膚を剥ぐ"バッファロー・ビル"
の猟奇事件を捜査する物語だが、
物語の本質的な面白さはレクター博士と
クラリスの秀逸な関係性と
その問答からくるものである。
アンソニー・ホプキンスと
ジョディ・フォスターの名演もあり、
レクター博士とクラリスの会話劇は
緊張感や面白味といった魅力に
溢れていると言えるだろう。
捜査官と犯罪者という相反する
関係性であるにも関わらず、
セラピストとクライエントのような
問答から次第に信頼して理解し合う
両者は、互いの事を知りたいという切望
を持っているように思えた。
そして、レクター博士の狂気が露出する
一連の殺戮場面は、
個人的に最も好きなシリアルキラーの場面
と言っても過言ではなかった。
不安な気持ちを残すエンディングも、
その後に続くであろう惨劇に想像を
掻き立てられて、面白くも恐ろしくある
素晴らしい結末だと感じられた。

バッファロー・ビルの事件自体の
単純過ぎる真相と犯人の小物な印象は、
個人的に不満点ではある。
事件の真相に関しては、
これなら事件が発覚した初動捜査で
何とかならなかったのかと疑問に思う程に
単純だと思えた。
犯人に関しては、
レクター博士という巨悪が描かれる以上、
その存在が霞んでしまうのは仕方がないが、
クラリスと対峙する際の犯人の行動は
奥手が過ぎると思った。

レクター博士によるクラリスの
カウンセリング過程と切望から起きる
残酷な事件を上手く合わせて描いた、
最高のサスペンス・スリラーだと思う。
それ位にレクター博士のキャラクターは
強烈であり、
正にシリアルキラーのカリスマだった。
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