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クローバーフィールド/HAKAISHAのnetfilmsのレビュー・感想・評価

4.0
 カラーバーに覆われたビデオ映像、セントラルパークで撮られた暗号名「クローバーフィールド」と題された極秘資料。4月27日午前6時42分、ロブ・ホーキンス(マイケル・スタール=デヴィッド)は恋人ベス・マッキンタイア(オデット・ユーストマン)の父親の高層マンションにいた。パパは出張中で、ロブはベッドルームに眠るベスにカメラを向ける。タグルアト石油社員のロブは日本への栄転が決まり、幸せな日々を過ごしていたが唯一、恋人ベスの存在が気がかりだった。それから1ヵ月後、ニューヨークの高級アパート。東京への転勤が決まったロブのために、数多くの友人たちが集まり、サプライズで送別パーティを開いていた。ロブの兄ジェイソン・ホーキンス(マイク・ヴォーゲル)とその恋人リリー・フォード(ジェシカ・ルーカス)は弟のためにプレゼントを用意した。ロブの親友であるハッド・プラット(T・J・ミラー)はビデオカメラを手に、別れを惜しむ友人たちの間を巡っている最中、突如大きな地響きが襲う。ベランダに出た一同は驚愕の光景を目撃する。高層ビルの間に炸裂する巨大な爆発、ロブたちめがけ飛来する火の玉、吹き飛ばされた自由の女神の頭部。一瞬にしてパニックに陥るNY市民、遂には軍隊が投入され、未知の生物との対決を試みる。

 P.O.V.形式のビデオ・フッテージのみで映像を繋ぐ様子は真っ先に1999年の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を彷彿とさせる。平和な日常の光景を突如狂わせた危険生物の襲来、NYの都市機能は完全に破壊される。NYの象徴である「自由の女神」や高層ビル群の破壊、ブルックリン橋が真っ二つにされる衝撃の映像は、まだ「9.11.」の傷の癒えないアメリカ人を震撼した。低予算ゆえに、怪獣の造形をしっかりと見せないアイデアも功を奏し、とりあえず何かが蠢いているものの、その正体は最後まで明らかにされない。手ブレの酷いカムコーダでの撮影は極めて観づらいものの、次に何が起きるのか最後まで緊張感が持続する。またロブやベスは徹底的に非力な庶民であり、怪獣に対抗する能力は何一つ持ち合わせていない。多分にB級的な映画ながら、関係のギクシャクしたロブとベスのカップルを脚本上の核とし、ロブのラスト・ミニッツ・レスキューを終盤に配置し、しっかりとした構成で見せる。ただ最後のハッドが見上げた怪獣の造形は少しサービスが過ぎる。ハッドが上書きした映像に残った4月27日の幸せな日々、別のヘリに乗ったはずのリリーのその後は明らかに続編を匂わせたものの、結局、別内容の『10 クローバーフィールド・レーン』に落ち着く。
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