改名した三島こねこ

ギャング・オブ・ニューヨークの改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

3.5
<概説>

19世期のニューヨークでは、アイルランド系移民と生粋のニューヨーカー達が日夜抗争を繰り返していた。ヴァロンはその最中で父を殺害したギャングのボス・ビルのもとに転がり込むことになる。父の復讐を誓ったヴァロンの瞳の燈の行末とは。
マーティン・スコセッシが盟友レオナルド・ディカプリオと共に、これまでにないスペクタクルの暴力を駆け抜ける。

<感想>

「渡世の義理はどうした」
「スコセッシは耄碌した」
「これは私が求めるスコセッシじゃない」

とまああれやこれや言われている本作ですが、個人的にはとてもスコセッシらしい作品でした。脚本も担当者が三人という不安の塊でしたが、18世期の社会的闘争をここまで描ければ上等でしょう。

スコセッシの代表作として『タクシードライバー』が著名過ぎるせいで、スコセッシ作品はお洒落で義理人情溢れて王道の作品というイメージがあるかもしれません。
ただ『グッドフェローズ』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』といった作品を彼の代表作として挙げたい人間からすると、スコセッシは派手な野良犬の喧嘩を格調高くしてこそ。良識に沿った綺麗な人情なんて二の次で、泥臭くもなぜか理解できる感情の縺れを描いてこそ。そんなめんどくさい願望が渦巻いていて、その願望を本作は見事に満たしてくれました。

別にヴァロンもビルも100%悪感情だけで動いているわけではないのです。きちんとお互いへの理解があって、それでも優先されるべき個人のセオリーがある。でなければヴァロンはビルの引導をあんな形で渡したりしません。
拗らせたクソめんどくさい男達が、貧富の軋轢という背景でなぜかお洒落に演出しつつ、個人的な因縁でいがみあう。いや好きですね。私はこれが見たかった。

とまあここまで散々詰りながら褒めましたが、試聴後はなぜか爽快感があります。いや全然ハッピーエンドちゃうやんけというような状態なのに、酒でも煽ったかのように腹の底がぽかぽかと。そしてそんな時にこれまたオシャレなタイトルロゴ。

流血沙汰とか普通に見られる方なら、ちょっとリラックスしたいなという時にオススメです。スコセッシ映画に限り、脳天を叩き割るシーンでほっと一息つけてしまう狂人の発言なのであまり真に受けない方がいいかもしれませんが。