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アンタッチャブルのsatoshiのレビュー・感想・評価

アンタッチャブル(1987年製作の映画)
4.5
 禁酒法時代、政治までその手を伸ばし、誰も手を出すことができなかったアル・カポネと戦った男たちを描いた作品。初めて観たのは学生時代でした。当時は、そこまで面白いと思わなかったのですが、映画館で観たからか、とても面白かったです。

 題名は「アンタッチャブル」です。それはもちろん、ネス率いるチームを指しています。ですが同時に、アル・カポネの事も指しています。目には目を。アンタッチャブルにはアンタッチャブルズを。といったところでしょうか。

 本作の面白いところは、単なる腐敗した組織に異人が入ってきて、その人物がほかの人を動かし、悪を倒す。という話ではないというところです。ネス自身も成長していくのです。そして、ネスを導くのがショーン・コネリー演じるマローンです。マローンは彼に突き動かされますが、同時にネスは、彼から「警察官」の正義を学びます。素晴らしいのは、このマローンの「遺志」が、ラストできちんと新米であるジョージに受け継がれる点です。腐敗していても、そこに「正義の心」を受け継いだ人間は残り続けるという、素晴らしいラストでした。

 また、それ以外にも、本作は各シーン毎の見せ方が非常に上手いと思いました。その白眉は、有名なシカゴ・ユニオン駅での銃撃戦でしょう。階段から乳母車が落ちていく。しかしその横では、激しい銃撃戦が繰り広げられている。このコントラストを、スローモーションという現代的な手法を用いて、ちゃんとバージョンアップし、ただのパクリではなくて名シーンにしてしまうあたり、デ・パルマの力量が素晴らしいものだと分かります。ここばかりが挙げられますが、銃撃戦の前も素晴らしいです。一見、普段と変わらない光景なのですが、ネスの胸中は緊張で張りつめている事を、BGMで見事に表現しているシーンです。

 他にも当時のシカゴを再現したセットとか、カメラワークが上手いなぁとか、騎馬戦のシーンも素晴らしいとか色々書きたいことはあります。こう見ても、本作は、「アクション映画を力を持った人が作るとどうなるか」を体現した「本当に良くできた素晴らしい娯楽作」だと思います。
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