だいすけ

恐怖の報酬のだいすけのレビュー・感想・評価

恐怖の報酬(1953年製作の映画)
4.5
救いのない映画だな…。

衝撃を与えると爆発するニトロを運ぶ任務。少しでも油断すれば即ゲームオーバーという緊張感溢れるスリラー。基本的に物語内音響に依存していて、静寂の中モーター音やサイレン、トラックの軋みが不気味に響く。おそらく唯一使用される物語外音響は、ラストシーンの音楽のみで、これがまた不吉な前兆として効いている。

岩石をニトロで爆破するシーンにおける編集によって緊張が高まる。登場人物の不安が表出した身体の部位をクローズアップによって捉えたカットをモンタージュで繋ぐ。これだけ拘ったシーンとは対照的に、死はあまりにも呆気なく訪れる。爆風で吹き飛ぶ煙草を見て、一瞬何が起きたか分からないうちに、もう取り返しがつかなくなっている。

危機的な状況でこそ本性が露わになる。威勢が良かったジョーは、不憫にすら思えるほど腑抜けだった。マリオは仲間を思うふりをしつつ、自己の利益を優先する。

ラストシーンもまた呆気ない。これはエゴイズムに対する制裁であるだけでなく、ベネズエラの移民の境遇を物語っている。一攫千金を狙っても、待ち受けるのは不幸な結末である。そこには決して超えることのできない絶望的な格差の壁が立ちはだかっていた。
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