だいすけ

ミッドサマーのだいすけのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.5
グロテスクな全体主義をハイキーによる耽美的な映像でみせる、白昼夢ならぬ白昼の悪夢のような作品。シンボルを読み解く面白さはあるものの、全体的に間延びしていて少し退屈に感じてしまった。

最初の儀式のシーン。嫌な予感は的中し、痛々しい光景を目の当たりにする。ここからはもはや最初の挿絵や至るところに散りばめられるシンボルによって、次の展開はなんとなく分かるのだが、常に虫の知らせを感じながら観続けなければならない気持ち悪さがある。

ミッドサマーとは夏至祭のことらしいが、人生における「夏」が18歳~36歳と考えると、人生における「夏至」はちょうど真ん中にあたる27歳である。作中で語られたかは定かではないが、スウェーデンを訪問したまさにその日、ダニーは27歳を迎えたのではないか。これは偶然とは思えず、ダニーは意図的に招かれたのだろう。やりくちはまさにカルトの洗脳そのものである。

もう一つ、ホルガ村における夏至と、ダニーの人生における夏至の同期というのも考えられる。ひいてはホルガ村とダニーの同期である。ダニーが徐々にホルガ村とその自然に調和していく過程が見て取れる。

それにしても、なぜ90年に一度なのか。人生の四季が巡るのは72年のはずなのに。この空白の18年は、「異質な季節」を表している?つまり、ホルガ村ではない外集団の血を取り込むことが夏至祭の目的ということではないか。そうやってコミュニティは維持されているとみるべきか。

この映画はとにかく全体主義の怖さに尽きる。不気味なほど感情の共鳴が起こるし、コミュニティのために命を捧げることも厭わない。しかしこれと似たことが、歴史では繰り返されてきた。戦時の日本もそうだ。個人主義に拍車がかかる現代においては考えづらいが、少し外に目をやると大げさな話ではないかもしれない。
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