プペ

恐怖の報酬のプペのレビュー・感想・評価

恐怖の報酬(1953年製作の映画)
3.4
大量のニトログリセリンを荷台に積んで悪路を延々運転する主人公に、同乗する相棒が言う。
「2000ドルは運転の報酬だけではない、恐怖に対する報酬でもあるのだ」と。
それはまさにその通りで、後半の主人公は年老いて恐怖におののく相棒を罵倒し続け、「お荷物だ」と悪態をつくが、もし一人であれば到底この任務を全う出来る筈はなく、早々に逃げ出していたことだろう。
そういう極限状態の中で左右される人間の心理が、巧みな演出の中に盛り込まれた映画だったと思う。


有名な映画なので、タイトルはもちろん「ニトログリセリンを運ぶ」という大体のプロットも認知していた。
そのことも影響したのか、主人公たちが置かれている環境と人間関係をつぶさに描いた導入部分は、少々冗長に感じてしまい、「いつニトロが出てくるんだ?」と間延びしてしまった印象は否めない。
序盤の人間模様が不要だとは思わないが、このストーリーで約150分の尺はやはり長過ぎると思えた。
″オチ″をああするのであれば、もっとシンプルな構成にした方が、「恐怖」とそれに伴う人間の心理が際立ち、映画としての娯楽性が高まったのではないかと思う。

ただ、繰り返しに成るが、中盤以降の演出は極めて巧みだ。
度重なるハプニングがバランスよく配置され、ニトログリセリンを運搬するトラックを二台描き出すことにより、どちらがいつ危機を迎えるのかという緊張感が効果的に持続された。

決して主人公のみをヒーロー的に描き出すのではなく、運搬にあたる4人それぞれの人間性をしっかりと描き、彼らが陥っている生活環境と、非人道的ですらある危険任務に自ら身を捧げざるを得なかった状況が、ドラマの中にきちんと盛り込まれていた。


最大の危険を乗り越え、一服しようとした瞬間、フッと巻き煙草が飛び散る。的を得た非常に良い演出だったと思う。
大ラスの言葉の通りの″オチ″については賛否が分かれるところだろう。
実際、思わず呆気にとられてしまった。
しかし、この作品がフランス映画あることを思い出すと、ある意味「真っ当」な顛末のようにも思えた。
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