さえちか

エルミタージュ幻想のさえちかのレビュー・感想・評価

エルミタージュ幻想(2002年製作の映画)
3.5
エルミタージュ美術館が宮殿だった時代と現代とが交錯しながら繰り広げられる絢爛豪華な歴史絵巻。90分ワンカットという離れ業が夢幻の世界に誘ってくれる。建物も衣装も美術品も堪能できて眼福な作品。
道連れのフランス人外交官は「ロシアの宮廷はフランスかぶれだ」とか「福音書も読まずに宗教画が分かるのか?(これは宗教を否定したソ連時代を生きた監督の当てこすりかも)」とか何とか皮肉を言いながら最後のダンスは結局楽しんでるのがちょっと笑える。所々に出てくるプーシキンとナタリアを探すのも楽しい。トルストイが描いた社交界ではこのような舞踏会があったのかと想像して楽しんだ。
家族と団らんするニコライ2世など歴代皇帝が出てくるが、彼らのその後を観客は知っている。ナタリアとフランス人が踊るのを遠くから見るプーシキンという構図で、ダンテスとの決闘で命を落とす彼の運命も連想してしまった。外交官の別れの言葉と帰路につく人々の奔流を見ていると、歴史は前に進むしかない方舟だということを表したのかと思う。
ペテルブルグは沼地の上に出現した幻の都…というイメージが最後のカットで思い浮かんだ。
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