これ単純に失敗作じゃね?
96分1カット。初1カットもの。初ソクーロフ。
自分の無学さによって理解しきれてないところもあるのだろうが(ロシア史や種々の西洋絵画のバックグラウンドに詳しければたぶんもっと物語が増幅されるはず)、それにしても映画的な喜びが薄い。
やはり1カットものは難しいのだろうな。
扉の開閉の強調により1カットの連続性を区切る発想の効果は、部屋ごとに時代やテーマが異なる美術館という舞台の特殊性によって倍加する。それでもしかし物語の平坦さを隠しきれない。
一度も映されず登場人物に知覚されることもない主人公は、歴史の傍観者としての鑑賞者の僕たちなんだろうね。
社会主義リアリズムをロマノフ王朝からのロシアの体質にその起源を見出して批判したり、準主人公をフランス人と言い切らずにヨーロッパの象徴のままにしたり、そういうところのクレバーさは素直にすごいなと思う。
個人の束としての歴史の河が不可視な未来たる海へと解放されるラストは、今になって感動してきた。